機動戦士ガンダム第30話小さな防衛線から感じる適材適所の意味とは

機動戦士ガンダム第30話「小さな防衛線」はホワイトベース隊が正式軍隊として役割別に階級が決まるシーンやマスコットキャラであるカツ・レツ・キッカが育児官のコーリンに保護されることを嫌い、脱走から偶然ガンダムの量産工場であるジムに時限爆弾を見つけ、


3人で何とか対処しようとするなど、各場面に細かい富野描写が盛り込まれているため
大人目線で見ていても、凝っているなあ~と感じる部分がちらほらと見られる様子。


特にシャアと妹であるセイラの偶然の再会やホワイトベースの位置づけなど、今後を
左右する展開が見逃せない
ため、今回も大人の目線で1つ1つ紐解いていきましょう。

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目次

・ホワイトベースは囮専門?定められた階級に秘められた上層部の評価は。
・カツ・レツ・キッカ大活躍!特殊工作員の目的と本当の子供らしさとは。
・ガンダムVSアッガイは不成立?シャアは何故逃げることに徹したのか。

ホワイトベースは囮専門?定められた階級に秘められた上層部の評価は

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機動戦士ガンダム第30話では冒頭から前回の降下作戦の余韻を思わせる戦いをガウ攻撃空母の爆撃に対し地球連邦軍の戦車と高射砲が対空砲撃。それに合わせジオン軍の小型爆撃機ドップ連邦軍のフライ・マンタが交戦する中トーチカ内でパトロール報告する連邦兵が、

「ポイントB3、現在までのところまったく異常なし。
 ジオンの定時爆撃、例のごとし」


自分達には一切関係なしで給料分働けば安泰!という感覚でいることから水陸両用モビルスーツアッガイの攻撃を受けてしまい、シャア以下特殊工作員の潜入を許してしまう。


そんな感覚で嫌な予感しかしない状態で連邦士官も定時爆撃と気にする素振りもなく、

「定時爆撃か。ま、心配する必要はない。それで、
 ホワイトベースの編成は現行のままで所属は
 ティアンム艦隊の第13独立部隊と決まった。
 ・・・次に、各員に階級を申し渡す。ブライト・ノア中尉」


と事なかれ主義で任務遂行をすることしか考えないことからジャブロー本部自体が局地の
連邦兵からは「本社」とバカにされるのもこういった部分から来ているのもうなづける。


また今回でホワイトベース隊の正式な階級が決まりブライトは中尉、ミライは少尉、アムロは曹長、セイラは軍曹、カイとハヤトは伍長、フラウ・ボゥは上等兵と今までの働きや出生などを考慮するとこういった感じになるのか?と思わせる点も興味深い。


筆者がこう言えるのもブライトはもともと士官候補であり艦長ということから同等に艦長をしているものとの比較で中尉となったことや、ミライに関してはゴップ提督の配慮により士官である少尉となっている点が系統として差を生んでいるように思えて仕方がない。


また最後に連邦士官が言った有名セリフ、

「なお、名誉の戦死を遂げたリュウ・ホセイは
 二階級特進、中尉に任命された。ほかの戦死者にも
 二階級特進が与えられている。以上」


とあることにリュウが戦死したシーンが頭をよぎってしまったために、

アムロ
「そ、それだけ、なんですか?」
連邦士官「はぁ?」
アムロ
「に、二階級特進だけで、それだけでおしまいなんですか?」
連邦士官
「なに?どういうことだ?」
アムロ
「戦っている時はなんにもしてくれないで、階級章だけで。
 リュウさんやほかの人にありがとうの一言ぐらい」


とつい感情的になってしまったので連邦士官に修正を受けてしまったのですが、連邦軍からすれば、このことはかなりの恩恵であるため表面上しか理解出来なかったアムロからすれば、連邦士官がぶん殴るくらいの修正を受けてしまうのも仕方がない。


アムロからすれば死んで階級が2つ上がったくらいで何が報われるんだ!という感情は子供だからそう思えてしまうのですが、大人の世界では軍人という身分は国家公務員と同じで階級が上がるほど遺族に支払われる戦死見舞金や遺族年金の額が多くなることから、


曹長だったリュウからすれば中尉になることは報酬が2倍以上違ったはずである。


これらの配所の大半はゴップ提督が行っており成果につながることは予算を割いてでも支払っていることが後日談で判明しているので、フラウ・ボゥがアムロに言ったセリフ、

「だいたい口が多すぎるのよね。たまに殴られるのもいい薬だわ」


は社会の仕組みが理解出来ていないアムロにはいい薬であり、連邦軍がどれだけ
貢献に対し恩恵を持って対応しているのか?
しっかりと理解したほうがいい。


ちなみに劇場版でブライトとリュウが3階級特進で大尉となっているのは補充要因のスレッガーが中尉でありTV版で命令を出すのに支障があったからと富野氏は公言している。


そういった感覚でゴップ提督も「評価」という点ではしっかりと行うために、

「その頃、地球連邦軍はシャアのゲリラ攻撃等の理由によって、
 宇宙戦略を急ぐことに決定した。提督達は考えたのである、

 ホワイトベースの実力をジオンは高く評価しており、
 これはおとりとして絶好である、と」


という理由からティアンム艦隊の第13独立部隊という位置づけから「おとり専門」と
いうことで適材適所と言わんばかりにブライトが落胆するような形となるのが印象的。


ティアンム提督の艦隊に組まれた理由も彼がレビル将軍派であり、いろんな意味で厄介者ということから、ゴップ提督の官僚主義による手腕がここでも見られるのですが、これもまた、ニュータイプ部隊という得たいの知れないものであるために攻撃対象となる上に、

自分達の安泰のための「捨て駒」という位置づけにも思えるため、今後の戦いも
拍車をかけて激しくなるという意味を持っているのです。

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カツ・レツ・キッカ大活躍!特殊工作員の目的と本当の子供らしさとは

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ホワイトベース隊の階級と今後の配属を辞令しているときに、育児センターへ行くことを拒むカツ・レツ・キッカの3人の子供達とそれに対し育児官のコーリンが説得していく展開が今後の展開に左右していくのですが、この話では彼らを通し本当の子供らしさとは?


この点を深くついていることから同じ世代の視聴者としても大人としても見逃せない。


カツ・レツ・キッカはサイド7のザク強襲で両親を失いアムロ達同様流れでホワイトベースに乗船して来た分、今までの戦いで自然と自立心が目覚めているので若干大人びた印象が生意気に思えるのですが、それに対し育児センターにいる連邦軍人のひねくれた子供が、

子供「無邪気なもんだな、みんな」
レツ「はあ?」
カツ「はあ?」
レツ「子供が無邪気じゃいけないのかよ」
子供「だけどそんなの大人を喜ばせるだけだい」
カツ「おめえ、かわいくないなあ」
子供「ずっとこんなとこいたらみんなこうなるよ」
キッカ「今ね戦争だよ」
子供「関係ないや。ここでじっとしてお父様とお母様が
   会いに来てくれるのを待ってるだけだもん」


という流れからキッカが死んだ両親のことを思い出しレツが殴ってしまうことでどちらも泣いてしまうという子供にはありがちのパターンなので、こういった部分を見るほど子供らしいということが安全な場所で待機することなのか?どう考えても疑問視してしまう。


だからと言ってアムロの言う通りこのままホワイトベース隊と一緒にいても、

「小さい子が人の殺し合い見るの、いけないよ」


とあるように戦場に連れて行くわけにもいかないのでこの点を改めて考えさせられる。


そういった大人の心配から遠ざけるようにカツ・レツ・キッカの3人は「ガンダムの工場」と称したジム生産工場に迷い込んでしまうのですが3人がアッガイの頭を乗り越えた後、

「連邦軍もここまでこぎつけた。これなど所詮は一部分の物だろうさ」


というシャアのセリフからジオン公国突撃機動軍戦略海洋諜報部隊所属、爆発物エキスパートの特殊工作員アカハナ以下8人の目的が、ガンダムの量産タイプであるジム工場とホワイトベースの爆破であることを物語っている。


シャアがこのような潜入から爆破を考えたのも、第2話のサイド7、第4話のルナツーなど潜入成功している経路があり、今回もアッガイのコストダウンでのジェネレーター出力低下から熱センサーに感知しにくい部分が幸いしていること。

加えて連邦軍の事なかれ主義で攻撃に対しても定時攻撃であることしか見ておらず危機管理能力に欠けることを知っていたことから、少ない戦力でも成功しやすい潜入爆破作戦を爆発物エキスパートの特殊工作員を従え一泡吹かせたかったのが最大の目的だと思える。


実際には偶然爆弾に気づいたカツ・レツ・キッカ3人による爆弾回収やシャア達の失敗、アムロやカイがジム工場への見学にいく偶然に見せかけた必然的描写により導線としてつながっていくのですが、こういった活躍を示すようにカイがコーリン育児官に言った、

「うちのチビ達はね、そんじょそこらのとはちと違うのよ。
 今まで何度も何度もドンパチの中、俺達と一緒に潜り抜けて
 戦ってきたんだぜ。大人のあんたにだって想像のつかない地獄をね、

 このちっこい目でしっかり見てきたんだよ。
 わかって?俺達と離れたくないんだよ」


と誰と一緒に過ごすか?という点で3人の本音を汲みながら最後まで戦うことになる。


まあこれが本当に正解なのか?この点は誰にもわかりはしないと思いますがこういった
描写を視聴者に訴えることにより戦争の先にある本当の未来とは何を意味するのか?


富野由悠季氏はカツ・レツ・キッカを通して改めて考えて欲しかったのかもしれません。

ガンダムVSアッガイは不成立?シャアは何故逃げることに徹したのか

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機動戦士ガンダム第30話ではジオン軍の定時攻撃の隙間を付くようにシャア専用ズゴックに搭乗したシャア大佐と水陸両用モビルスーツ第5弾アッガイ4機による爆破工作を行うため、闇の中に落ちていく5機が冒頭から印象に残るのですが爆破作戦が失敗した際に、


何故シャアはアッガイ4機に対し、

「構うな。全員脱出する。作戦が失敗と
 なればただちに撤退だ、いいな?」


徹底して逃げに徹したのは何故なのか?この点があなたに理解出来るでしょうか。


アッガイの性能だけを見ると頭部にザクのマシンガンと同じ口径である105mmバルカン砲を4門も装備しており、腕の武器は接近戦で6本と多い爪状のアイアン・ネイルと伸縮性のあるフレキシブル・ベロウズ・リムの腕を使えば接近戦でも一撃で破壊可能。

さらに離れてもアイアン・ネイルが引っ込み6連装ロケットランチャーとなりミサイルで応戦出来る他、両腕の先端にはメガ粒子砲と攻撃力に関して十分であるため、5機で応戦すれば!と子供の頃の筆者は逃げたからやられたのでは?と思えて仕方がないのですが、


その理由も大きく2つあるのでシャアはあえて逃げに徹したのだと思えてくる。


1つ目の理由は搭乗しているパイロットが爆発物エキスパートの特殊工作員であること。


アカハナ少尉以下8人は基本的に爆発物を仕掛けることが仕事なので、モビルスーツでの戦闘は考慮しておらず指揮官として生存率を考えた結果逃げることにしたのだと思える


特殊工作員の中にもモビルスーツに長けているものがいるかもしれませんがシャアの感覚では前回ガンダムと戦って一筋縄ではいかないことを身を持って知っていることや、経験上失敗したときの引き際を誤ると全滅することを考慮したことが主な要因である。


2つ目はアッガイの総合能力。アッガイ自体ゴッグやズゴックの良い面を引き継いでいるので攻撃力に関してはヒケを取らないのですが、これまでの水陸両用モビルスーツの開発で生産コストが高くついたことから廉価版として開発されている点が欠点となっている。

そのためザクⅡを水冷式に改良したジェネレーターやフレームを利用していることから機体性能が根本的に弱く、ザクⅡに乗ったことのあるシャアからすれば、特殊工作員の技量も考慮した上でザクに毛が生えた程度のもので勝てるわけがない!と冷静に判断。


結局は熱センサーなどに感知しないようにステルス性を高めただけの機体であることから、

「止まるな、止まったら助かるものも助からんぞ、走れ」


と発破をかけるように逃げに徹しさせたのも、これらが関係していたからなのです。


また逃げるという意味では自分の出生を否定してジオンの士官となったシャアと連邦軍の兵士としてカツ・レツ・キッカを探す妹セイラとの偶然的出会いもこの後の展開を思わせ、

シャア「ア、アルテイシア」
セイラ「ああっ・・・」
シャア「やはり」
セイラ「・・・ま、まさかジオン軍に入っているなんて。
      やさしいキャスバル兄さんなら」
シャア「軍から身を引いてくれないか、アルテイシア」


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とお互いに敵としての立場で再会することから、本来なら嬉しい再開のはずがショックでしか無く、しかもシャアの「やはり」という部分が無音のまま進むので、セイラには自分の思いが伝わっていないように思えるのが、後々の嫌な展開を予感させてしまう。


こんな感じでシャアはいろいろなものから逃げるだけとなったお話ですが、今後はホワイトベースを宇宙から襲撃する側になるので、まだまだ油断出来ない戦いが続くのです。

レクタングル(大)
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