機動戦士ガンダム第27話「女スパイ潜入!」では本格的な戦いから流れで軍人になることを嫌ったカイ・シデンが、偶然に出会ったミハル・ラトキエの生活実情を知ることで、自分が何と向き合えばいいのか?次回を含め、カイの成長としての導線となっている。
また軍隊として期待されるホワイトベースクルーのGアーマーの欠点に付いてレビル将軍への改善案や新型水陸両用モビルスーツ第2弾「ズゴック」の登場。シャアの飴とムチを使った管理術など、細かい描写がふんだんに盛り込まれているのでこの点も見逃せない。
また今回は第28話「大西洋,血に染めて」への布石になっている部分が大きいですので
その点を中心に大人の目線で1つ1つ紐解いていきましょう。
目次
・ホワイトベースを降りるカイ?軍隊を抜けた理由と戻ってきた決意。
・女スパイミハル!ホワイトベースに潜入までの経緯と複雑な心境。
・ガンダムVSズゴック苦戦するアムロに決着をつけた決め手とは?
ホワイトベースを降りるカイ?軍隊を抜けた理由と戻ってきた決意
機動戦士ガンダム第27話では本格的な戦いに備え、新しく配備されたGアーマーに付いての
欠点と改善案を運用したアムロを中心に展開していくのですが、このことでカイは、
「すまない、ちょっとトイレ」
で席を外しアムロがGスカイの欠点をイージータイプで改善することを伝えた後で、
「冗談じゃねえよ」
と不満そうに壁を叩いてそのまま外で待機するのですが、その後のカイのセリフ、
「ヘッ、みんな一生この船にいるつもりらしいや」
が地球連邦軍への不満と共にホワイトベースを降りる要因となってしまう。
この理由も前回の話でレビル将軍が新型兵器の脅威を伝え、それに対抗するようにジャブローへ向かう正式軍隊となったことも含め、ホワイトベースが何も疑問も無く組織化されいいように使われている点や、成り行きで戦争をしていた経緯を含めることを見るほど、
黙って命令に従う奴隷のような感覚から軍にいると命がいくらあっても足りない。
そんな感覚からホワイトベースを降りる理由になったのだろうと筆者は分析している。
カイは自他共に認める「軟弱者」とあるのですが、実際には誰よりも現実主義者。
物事の本質を見抜くことに長けていたことから、このまま終わりなき戦争に巻き込まれることは、死を意味することになるのを誰よりも感じてしまったのでしょう。
またカイが普段おちゃらけたり皮肉屋でいるのも冷静さの裏返しであり、自分の限界をしっかりと見極めているつもりなので、感情丸出しでぶつかってくるブライトやアムロに対して誤解を生む行動となっても、立ち位置を理解して対応してきたためです。
実際にカイは機銃射手やガンキャノン・ガンタンクの操縦手になってもあまり文句を言わずにやるべきことをそれなりにこなしながらも事なかれ主義で関係を保ってきたため、
「今日まで戦ってきた仲間」というアムロの説得にもおちゃらけた感じで受け流し、
常に張り詰めていたブライトに関しても、
カイ
「ブライトさんよう、無理のし過ぎじゃ
戦いは勝てないぜ。だから俺は降りるんだ」
ブライト
「無理はジオンの連中だってしているんだがな」
と平行線をたどることからミライに対し「軟弱物」だと思うだろ?とカイのことに対し同意を求めるのですが、ミライやセイラは淡々とした表情であまり心配していなかったことから、
本当は帰ってくることを予想していたのでは無いかと思えてしまう。
結局、どこへ行こうとアテは無く偶然を装って出会ったスパイ107号ミハルの家でお世話になるのですが、食事をしている間にホワイトベースのことを聞くミハルや弟ジルと妹ミリーの不自然な部分に感づいたのか?ミハルの商売道具の下にあった拳銃を見つけ、
「・・・ほんと、いやだねえ」
と 民間人であるはずのミハルが何故こんなものを持っているのか?想像が付いてしまう。
何せカイは頭の回転が速く本質を突く能力に長けていることから、戦争で孤児になったとは言え、放置された家に住むことや顔しか知らない見ず知らずの男を入れることから、おかしい!と疑っては、やけに情報を聞き出すことに慣れていること。
その割に弟や妹がミハル以外になつかないことを見て「訳あり」と感じたことから、
「右のエンジンが手間取ってるらしいんだ。
あそこを狙われたらまた足止めだろうけどさ」
とミハルがジオン軍のスパイであることを察知しながら情報を流してしまう。
この点に関しては弟妹を訳アリで養っているミハルに同情した部分が大きいのですが、実際にはミハルが本当にスパイかどうかという点や、ホワイトベースが正規軍として何の疑問も無く組織化されることへの腹いせとも取れるのでカイの複雑な心境とも捉えられる。
そのためカイが戦火を見た時に迷ったような感じで、
「関係ねえよ。し、しかしよう、チクショウ、
なんで今更ホワイトベースが気になるんだい」
となったのもアムロが別れるときに言った「今日まで一緒にやってきた仲間」と
いう感覚が、意識していなくてもあったことから、冷静に対応したつもりでも、
「とにかく連中ときたら手が遅くて見てられねえんだよ」
というセリフが本音であり彼もまた普通の人間として表現が下手なだけだと思える。
そのことを察知していたのか?セイラも普通に対応してはハヤトのむくれる姿が印象的なのですが、何だかんだでちゃっかり元のさやに戻っただけというオチですので、深層での結束というのは意外と見えないところにあるのかもしれませんね。
女スパイミハル!ホワイトベースに潜入までの経緯と複雑な心境
機動戦士ガンダム第27話はタイトルが「女スパイ潜入!」とあるようにジオン軍のスパイ107号であるミハル・ラトキエがホワイトベースに潜入するのが今回のメイン。
この導線となるように第26話から売り子としてスパイをするミハルと軍人としてベルファストを守るカイ・シデンとの偶然の出会いを何度も入れることで、自然な描写としているのですが、カイの洞察力の高さからジオン軍のスパイであることを知っていた様子。
実際には戦火でかなり危なくなっているのに売り子として出ている様子や自分から話かけてきたことから、ミハルが住んでいる空き家での出来事を踏まえて確定するのですが、ここでもはっきりと「スパイ」と言わずどこまで知っているのか?
お互いに腹の探りあいをする割にカイがミハルに対し気遣いする点が見どころである。
機動戦士ガンダムの世界観では言ってしまったら台無しという描写が結構多いので、視聴者によっては意味合いを勘違いすることが大きいのですが、カイとミハルに対しても似たもの同士のような感覚を捉え、戦争の中で軍人やスパイをやらないと喰っていけない。
そんな感覚から会話の中でホワイトベースの様子を探ろうとしたミハルに、
「いいじゃねえか。弟や妹の面倒を
見ているあんたの気持ちはよくわかるぜ」
と意味深な部分で言わぬが花という状態で表面ではわからない気持ちを汲んでいる。
そういった戦いの中でスパイ行動をするのでマッドアングラー隊、フラナガン・ブーンの副官であるコノリーから道端で潜入用の連邦軍制服と金を貰い、弟妹のため潜入しようとするのですが、ここでも何かを予感するようにジルとミリーに別れを告げるときの会話、
「さ、お前達。姉ちゃん、仕事に行ってくる。
今度はちょっと長くなるかもしれないけど、いいね?
お金は少しずつ使うんだよ。置き場所は誰にも教えちゃいけないよ」
が二度と会えないような感じに見えるので切ない気持ちとなってしまう。
このことについてはジルもミリーもミハルのおかげで生きてこれたことを知恵として身に着けているため、泣いて困らせることをしないのですが、戦火の中抱きしめらた際に、
「姉ちゃん、姉ちゃん、母ちゃんの匂いがする」
と言ったミリーのセリフが何かしら今生の別れのような感じから切なくなってしまう。
こういった演出にしているのも、戦争に対する否定をしながらも戦争の中で頼らないと生きていけない矛盾さを描写しているからなのですが、実際にはその考えは甘く次回の悲惨な最後につながるため、カイの成長と共にジオン壊滅への決意につながるのです。
ガンダムVSズゴック苦戦するアムロに決着をつけた決め手とは?
スパイ107号ミハルの連絡からシャアの指示により潜水艦ユーコンに乗るブーンを中心に
ゴッグ1機と新型のズゴック1機の水陸両用もビルスーツで仕掛けている間にミハルが
ホワイトベースに潜入するという、そんな展開で戦闘が展開するのですが、
新型第2弾としてズゴックが出てくるこの話では、前回のゴッグ以上に手こずるので
ファンであるほど手に汗を握る攻防から目が離せなくなってしまう。
ここでユーコン2番艦から出るズゴックに乗るカラハが、
「調子は良好だ。俺にはゴッグよりは
こいつの方が性に合ってる感じだなあ」
とあるようにズゴックは量産型水陸両用の中でも、水冷と空冷のハイブリットであることからゴッグよりも20トンも軽いので水中でもゴッグ以上に速く、ハワーに関してもハヤト搭乗のガンキャノンの両手をつかんで動けなくするくらい強力でありながら、
地上でのバランスや直撃を食らっても倒されない頑丈さから主力となっている様子。
ゴッグに関しては前回、ビームライフルまでは耐えられないということを悟っていたことや
水中におびきよせてアイアンネイル(鋭い爪)でやっつけることは理解していたので、
「同じ手にのるか」
でガンダムシールドで防御しては、その隙にドテッ腹に一発ビームライフルで撃墜!
ダメ出しでもう一発同じところに撃ち込むことで撃墜することに成功する。
しかしズゴックに関しては分断されたハヤト搭乗のガンキャノンをガンダムと勘違い
したのか?カラハの技量もあり両手クローの中央に内蔵してあるメガ粒子砲を連射。
ガンキャノンの分厚い装甲でなければおそらくやられていたのでは?と思える部分や、クローで力比べしても負けないパワー。カイが修理が終わったガンタンクで応戦すると、接近戦を弱点と見切ったのか?水圧対策で胴体と一緒になっている頭部で体当たり!
ガンダムがそこへ応戦しても、地上では勝てないことを察したのか?低空飛行で水中に
おびき寄せ、得意な部分で対応するのでヘラヘラしながらも対応するカラハに大苦戦。
また水中ではゴッグ以上に速く動けるためガンダムもガンダムシールドで防戦一方となり、さすがのアムロも手が出せなくなりシールドが間に合わない状況になってしまうのですが、ここでも逆転の発想でズゴックを地上におびき寄せ、ガンダムが出てきたと同時に、
「来るな」
の一言から反射的にズゴックが出てきた瞬間!カイ搭乗のガンタンク120mm低反動キャノン砲でバランスを崩しそこをガンダムのビームサーベルで一刀両断する部分から、知らないうちにカイも無くてはならないホワイトベースの仲間という意識を持ってしまう。
このような展開からカイは何事も無かったかのように復帰となり、ブーンは作戦失敗の責任を取る意味からミハルとの接触でホワイトベースの移動先を探るようになるのですが、
これらがまるでパズルのように複雑に組み込まれながら展開することから、ここで言いたいことは、人というには見えない部分こそ本質があることを富野由悠季氏は伝えたかったのかもしれませんね。