機動戦士ガンダム劇場版は本編の第1話から第14話前半。ジオン軍がサイド7
襲撃からガルマアダ討ち部隊であるランバ・ラルとの遭遇を再編集したものです。
当時、映画にされるアニメは人気のあったTVアニメ本編からダイジェストで作成され
1本にまとめることが多かったのですが、機動戦士ガンダムは人間関係や話のつじつま
などが複雑に入り組んでいることから、カットするほうに苦労したのは有名なお話。
また14話前半までにしたのも、興行成績次第では撤退もやむまいと懸念していたこと
で機動戦士ガンダム劇場版には「Ⅱ」や「Ⅲ」のような番号がついていないのですが、
結果として「アニメ新世紀宣言」と呼ばれる新宿でのイベントが開催され15000人
の観客の中からコスプレで盛り上がるファンが続出したためこれはいけると続行!
全作の再編集として三部作にまで続編が作られるという偉業を成し遂げたのですが
何故、機動戦士ガンダム劇場版はファンの心を捉えたのでしょうか?
目次
・アムロ・レイは巻き込まれ型主人公でひきこもりの機械オタク?
・ガンダムは白一色で売りたかった?富野由悠季の本音。
・周到なシャアの追撃!そしてガルマ謀殺への誘導。
・ジオン公国の脅威!ギレン・ザビの演説による掌握術
アムロ・レイは巻き込まれ型主人公で機械オタク?
当時アニメファンというとオタクで暗いという印象があり、あまりいい印象が無かった
のですが、今ではオタクであることを誇りに思い、そのことで盛り上がる軍団を形成
しているファンも意外と少なくない。
また一般的にロボットアニメは悪の攻撃に巻き込まれて仕方が無く戦う「巻き込まれ型」
が鉄板とされており、そこから正義心が生まれ!自主的に敵を倒すという行動が多かった
のですが、ガンダムの主人公であるアムロ・レイは今までの主人公とは大きく違っている。
それがひきこもりの機械オタクという点です。
「V作戦」というガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの制作を進める技官テム・レイの
息子であったアムロは父の影響で機械いじりが大好きなのですが、戦時下であるのに毎日
自分の部屋にこもり食事も取らずハロというハンドメイドロボットの改良に夢中!
ジオン軍の偵察隊である「ザク」がサイド7内を攻撃している間でもおかまいなしに改良
をしていたので幼馴染の少女フラウ・ボゥが心配になって駆けつけるくらいなのでオタク
の極みと言っても過言ではないのですがそういった思考や行動が後にアダとなります。
この理由もガンダムに乗れたのだから!とサイド7襲撃で不足していた正規パイロットの
代わりを無理やり押し付けられたり、頭ごなしの命令をする艦長代理ブライト・ノアとの
衝突からですが、そこでガンダムに乗ることを拒否するシーンも意外と斬新でした。
これらの繰り返しや精神が休まることのないジオン軍の怒涛の攻撃から閉鎖的極限状態!
ということもあり最後には脱走!という出来事にまで悪化してしまうことになります。
これもまたジオン軍襲撃!での正規艦長の死亡によりホワイトベースの若き艦長となった
ブライトの焦りやわがまま放題に育ったアムロとの思考の違いからだと思えるのですが、
このような人間臭さを感じさせるぶつかり合いをリアルに描いていくことにより
ファンの「それ何となくわかるよなあ~」という感覚を引き出したのかもしれません。
ガンダムは白一色で売りたかった?富野由悠季の本音
ガンダムというとアニメやおもちゃ業界では鉄板で売れる正義の象徴として「白」「赤」
「青」「黄色」のトリコロールカラーを使ってはいますが、富野氏の思考では最初は
白一色でこれまでの子供向けアニメを払拭したい!と制作陣一同もそう思っていた様子。
そのせいもあってか?ガンダムの呼称をセリフとして、
「白い奴」「白いモビルスーツ」「白い悪魔」
視聴者に白を印象付ける表現をしていたのですが、スポンサーであるおもちゃ会社では
それでは売れない!と却下。胴体にさりげなくトリコロールカラーが使われている。
確かに軍隊のようなカラーを求めるなら自然色に合わせたり、背景など保護色が目視する
ほど発見されにくいのでステルス性を考えると一色単は理にかなっているのですが、
スポンサーのおもちゃが売れないという意見や低学年層に見て貰いたい!という思考を
考慮すれば納得のいく配色となるのは仕方のないことでもある。
富野由悠季氏としてはガンダムはストーリー設定としてもっと中高層の年齢が視るはず!
と読んでいたため、リアルさを求めたかったのですが、ここにも大人の事情と言えるもの
がしがらみとして関係して来ているので、この点が意外な盲点なのかもしれません。
周到なシャアの追撃!そしてガルマ謀殺への誘導
機動戦士ガンダムのストーリーはジオン軍が宇宙を管理している地球連邦軍に独立戦争を
仕掛けることが定義されているものの、敵も味方も人間同士!善悪という部分を超えて
人間臭いドラマをリアルに描いているため、政治的な陰謀や現場の劣悪した生活状況、
モビルスーツと呼ばれるロボットにおいても現実兵器に近いものを描いていることから
コアなファンが今でも多いのですが、当時のスポンサーとしては低学年向け子供アニメ
として描いているのでそれだけではウケが悪く視聴率も振るわないことが多かった。
そこで強力なライバルとして売れる定番であった「美形悪役」「ミステリアスなマスク」
のシャア・アズナブルとの戦いをメインにすることで子供でも夢中になれる展開を演出。
ザク襲撃!でサイド7から避難した民間人や足りないクルーの補助をするために渋々参戦
することになった主要キャラ達の日常をリアルに描きながらも、ガンダムに不慣れで翻弄
されるアムロVSザクの3倍早いシャア専用ザクという構図を当てはめていくことで、
ストーリのわからない子供でも何となく凄い!ということを理解させコアなファンからは
1話ずつの緻密な構成からのめりこむよう計算しつくされているのです。
そのためサイド7の民間人を地球連邦軍の本拠地である「ジャブロ」に避難させる任務が
シャアの周到な襲撃によりガルマが治める北米大陸へと移動させられ苦戦となってしまう。
シャアとガルマは士官学校時代からの同期でありザビ家の末弟ながらも御曹司で大佐なので
少佐であるシャアは部下として参戦するのですが、同期とはいえ、彼は父を死に追いやった
デギン・ソド・ザビの息子なので、シャアの中では単なる憎悪の塊でしかない。
またガルマはザビ家の象徴として期待されていたことや、恋人でありロス市長の娘である
イセリナとの結婚を望んでいたため、軍嫌いのイセリナの父や国民に自分の力を示したい
と焦った結果。シャアの罠にハマりホワイトベースに集中砲火され戦死してしまった!
ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい。
シャア!はかったな!シャア!
どさくさまぎれであったがシャアの復讐はこのような裏切りで遂行されたのでした。
ジオン公国の脅威!ギレン・ザビの演説による掌握術
機動戦士ガンダム劇場版ではグフに乗ったランバ・ラルが脅威として威嚇するシーンで
終わるのですが、これもまたガルマアダ討ち部隊として冷や飯食いから脱却するための
ものであるので、このシーンが印象的な人も多いかもしれません。
しかし劇場版一作目で一番印象的に残るのは総帥であるザビ家の長男!ギレン・ザビの
演説による掌握術がこの後のジオンの脅威につながることは誰も予測して無かった。
何せギレンは弟、ガルマの死を国葬として称え、演説により自分達の正当性や選ばれた
人種であること、英雄の象徴であったガルマが死んだことで自分達が何をすべきなのか?
この点を力強く全宇宙に放送をしたことでジオン公国全体の士気高揚と連邦軍への脅威の
両方を訴えたのですから、「掌握術」に長けていることは明白である。劇場版ですとTV
版よりも若干違いますが、これを演じた銀河万丈さんの演説は心が震えますね。
ギレンはこの後も何度か兵士に直接、演説で戦意高揚を掲げるのですが、このことに終始
こだわった理由も、戦意高揚が一番戦力を挙げる近道だった!ということを知っていたから
に他ならないと思えるのです。
これにより戦いはより激しくなり多くの犠牲者を生むことになりますが、それ以上に
アムロに取って大事なものを失うとは・・・このとき誰が想像したでしょうか?