機動戦士ガンダム第29話「ジャブローに散る!」ではスパイ107号ミハルの情報を元にシャア大佐以下、ジオン軍モビルスーツ部隊が地球連邦軍の本拠地であるジャブローの入り口を目指し降下するという、壮大かつ無謀な作戦として描いているのですが、
この中でも南米っぽさを感じさせるように青い美しさで有名なモルフォ蝶からワニであるブラックカイマンまで7種類の独特な動物が各場面が台本として設定される中、有能さを思わせる敵味方の静かな攻防の中を自然に重ねているのがいかにも富野由悠季氏らしい。
その他、短い1話の中でアムロ達がこれからの戦いで知っておかなければならない部分を、さまざまなキャラや新型モビルスーツの描写としてメッセージのように捉えられますので、今回も大人の目線で1つ1つ紐解いていくことにしましょう。
目次
・ゴップ提督とゾックは本当に無能なのか?ジャブロー攻防で見抜く特徴。
・マチルダの婚約者ウッディ大尉から学ぶホワイトベースの戦争への視点。
・赤い彗星再び!ジャブロー降下作戦の本当の目的とアムロとの結末は?
ゴップ提督とゾックは本当に無能なのか?ジャブロー攻防で見抜く特徴
機動戦士ガンダム第29話ではホワイトベースが宇宙船用ドックに入ったことで、レーダーから消えた位置からジャブローの入り口を探索するために、北米のキャリホルニアから超大型輸送ヘリコプター「ファット・アンクル」にズゴック2機ゾック2機の増援を受領。
先発部隊としてゴッグ2機と南米にあるジャブローの入り口を水中から見つけるのですが、
ジャブローの司令部に篭り、降下してくるジオン軍に対応するゴップ提督共々
無能であると評されていることから、本当にどちらも無能なのでしょうか?
ゾックが無能!と称されるのもメインカメラがやられてしまったシャアのズゴックを逃がすため、援護をしているうちにガンダムの反射的動きからビームライフル1発でやられてしまうのですが、ジャブローへ入れたのもパイロットであるボラスキニフの成果であり、
ゾック自体も使用用途を間違っていることから無能扱いされていることに気づいていない。
まずパイロットのボラスキニフ曹長、彼のセリフは少ないものの動向を見ると、
「見つけたぞ、ジャブローの入り口だ。
この金属反応がなけりゃ見過ごしていたところだ」「ということは攻撃はない。カムフラージュを
見破られたくはないはずだからな」
と冷静に判断しては空中降下から入り口を見つけるどころか空中と水中からの攻撃で部下2人を失うシャアと比べると、シャア以上の活躍評価であることは言うまでもない。
またゾックに関しても副官のマリガンが言うようにザクの4倍以上のパワーの大出力ジェネレーターを持っていることから収束ビーム砲であるメガ粒子砲としてガンダムのビームライフル並に連射が可能であり移動要塞利用ならモビルアーマーより安価で強力である。
ゾックが無能だ!と思われるのはその運動性にあり総重量220トン以上という部分から旋回能力や歩くという動作が出来ないことで、ドムと同じくホバー機能を持ち、苦肉の策で後ろ前という前後同じでどちらからにも対応出来るデザインとなっていることや、
爪であるクローも飾りであり量産時にはアンカーとして使う予定だったことから、防衛のために安価な移動要塞として援護射撃に向いているため、用途を見抜いたシャアが、
「見掛け倒しでなけりゃいいがな」
という通り1発で倒されたのも動きの早いガンダム相手に壁にした結果に過ぎない。
相対として「ギレンの野望」というゲームで階級以外が最低の能力から無能扱いされている
ゴップ提督ですが政治的手腕としてはかなりの能力であり、この話でもミライに対し、
「ミライさん、それがあなたのお父上への恩返しと思ってもらいたい」
「連邦もおしい政治家を亡くしたものだと今でも
残念に思っています。お父上がご健在なら
あなただってサイド7に移民など」
と意味深に話をするシーンがあるのもヤシマ氏と深い関係性がある以上に官僚主義で
今の地位に上がっていることを示していることから、相当の策士と思える。
簡単に言えば都合の悪いことは前例がない!と突っぱねながらも実際にやらせて見ては
結果が良ければそこへ戦力を集中させ、悪ければ非難の対象として責任を取らせる。
実際に「V作戦」を実行させたレビル将軍がその例でありジャブローの司令部でも、
「狙いは宇宙船ドックのあるAブロックのみ
ああ。永遠に厄介者かな、ホワイトベースは」
とジャブローの入り口の1つを露呈されたと同時にブライトやミライにはこれまでの行動を罰則無しでホワイトベースに正式配属にしたのも、官僚主義から学んだ「反攻作戦の陽動」という感覚やジオン軍が連邦軍の切り札的存在として感じていることから、
今までモビルスーツの実験と称して集中砲火させるように仕向けているのだと思える。
またゴップ提督は全体の指揮官であるわけでもなく上にも将軍がいたことから政治的な感覚で物事を見据えることが強いことから、この話のように敵の狙いを正確に把握することは得意だったのですが、特化したのはその部分だけでありブライトが激怒してしまった、
「すべてのテレビを船外監視用に切り替えろ、これでは
戦いようがない。あとで作戦本部にどなりこんでやる」
とあるようホワイトベースに全く情報を入れないという軍事能力の低さから、一年戦争終了後は政治家としてティターンズやエゥーゴに頑固なくらいに中立を保ったのです。
マチルダの婚約者ウッディ大尉から学ぶホワイトベースの戦争への視点
南米っぽさを見せ付けるように前回の戦闘で傷ついたままのホワイトベースを癒すように青い美しさで有名なモルフォ蝶が描写されそれに反してカイの行動がミハルを失ったことへの悲しみを深く感じさせるためか?話しかけづらい印象が所どころにあるのが対照的。
こんな感じでそれぞれの想いを乗せてジャブローの本拠地に入ってはモルモット部隊であることを感じさせる身体検査や相反するように、マチルダの婚約者であったウッディ大尉の人間性を感じさせるのですが、あのマチルダに結婚したいと思わせる人物であるため、
彼から学ぶことはこの話だけでも散りばめられていることからファンほど見逃せない。
ウッディ大尉はジャブロー所属の技術仕官。修理補給の関連からマチルダと出会い彼女が身を挺して守ったホワイトベースだからこそ愛着が強かったことから、ジャブロー襲撃で潜入したシャアが相手でも身を挺して戦ったのですが、第一印象から誠実かつ真面目。
「監督は損な役でね」
と食事をしながら夜通しの作業をする部分はまっすぐな人間であることを示している。
またウッディがオデッサ作戦後にマチルダと結婚することに対し、
「す、すいませんでした、ウッディ大尉。僕がもっと、
もっとガンダムを上手に使えればマチルダさんは
死なないですんだんですよね。すいませんでした」
と悲しげに謝っているシーンでも、真面目な顔で怒りをあらわにして、
「うぬぼれるんじゃない、アムロ君。ガンダム一機の働きで、
マチルダが助けられたり戦争が勝てるなどと
いうほどあまいものではないんだぞ。パイロットはその時の戦いに全力を尽くして、
後悔するような戦い方をしなければ、それでいい」
と諭すような感じで先輩として大人として自分の立場を理解しながら最善の行動をすること
プライドとして持つことを物語っていることから、マチルダが惚れるのもうなずける。
そのことを有言実行と言わんばかりに、
「私はマチルダが手をかけたこのホワイトベースを
愛している。だからこの修理に全力をかけている」
という部分から戦闘用ホバークラフト「ファンファン」でシャアに攻撃を加える部分が無謀でありながら誠実さと熱い想いがこみあげマチルダの結婚式が余計に重くのしかかる。
ホワイトベースクルーからすれば、今までの戦いの経験から第二戦闘配置としてジャブローに襲撃がかかっても、生きるか死ぬかで無我夢中でやってきた経験からか?
「ホワイトベースです。第二戦闘配置たって
俺達ホワイトベースに行くしかないでしょう?」
とカイが言うように自分達が生き残るにはホワイトベースしかないという部分が
何かしら対照的に思え、ウッディ大尉が戦死した後にその想いをブライトに話した際、
ブライト
「ウッディ大尉が死んだのか」
アムロ
「はい。僕ら以上にホワイトベースに
愛着があったようです。そんな気がします」
ミライ
「わかるわ。男の人ってそんな感じ方するのよね」
セイラ「そうなの?」
ハヤト「さあ」
と多種多様となり改めてホワイトベースのありがたみを知ることになる。
結果としては今後もホワイトベースのおかげで生き残ることになるため、ウッディ大尉の戦死はもっと重いものであることが大きいのですが今回の話であっさり死んでしまったことの意味も彼らに「生きる」という意味を身を持って知らせたかったのかもしれません。
赤い彗星再び!ジャブロー降下作戦の本当の目的とアムロとの結末は?
これまでの戦いで「シャアは一体いつ出るのか?」という抗議があったのか?新型兵器第4弾としてゾックを従え自らもシャア専用と称した赤いズゴックに乗ってジャブロー降下作戦に殿(しんがり)として出て行くので、ガンダムとの対決に期待が膨らんでしまう。
大人の目線で「ジャブローに散る!」を判断すると散るという部分にさまざまな意味をもたせているため、ウッディ大尉のホワイトベース死守での戦死やジオン兵達の無謀な降下作戦による戦死、アムロがガンダムの生産タイプと称したジムがあっさりやられるなど、
さまざまな部分が交錯しているのですがやはりファンとしてはアムロVSシャアの再開を期待していることから、そこまでの描写がこの話のメインであることは言うまでもない。
普通ならアムロの成長とシャアの攻撃に注目すべきかもしれませんが、最初に注目すべき点はジオン軍のモビルスーツ降下に成功したのが28機と攻略には少なすぎる現実。
ジオン軍はガウ攻撃空母や小型戦闘機ドップでゆさぶりをかけるものの、ジャブローは地下にあること対空砲火が激しく、射程外からザク、グフ、ドム、ズゴックなどのモビルスーツを降下させるしか無かったのですが、実際には自由落下で的となることから、
「リー・ホァンがやられたか。さすがにジャブローだ、
何機のモビルスーツが降りられるんだ?」
とシャアが苦言するようにエースでないと回避出来ない現実から降りるだけでも大苦戦。
さらに水中に無事降りたとしても基地から魚雷が発射されることから、
「ジ、ジッタルもか。ええい、先発隊と接触するのが第一だな」
と部下であったズゴック2機ともジャブローに入る前にやられるのでさすがのシャアも
困惑を隠せず、潜入口を見つけたボラスキニフのゾックと一緒に裏から回ることになる。
実際に投下されたのがシャアを含め54機とされており、この程度の戦力でジャブロー制圧は不可能だと思えるのですが、ジオン軍があえて降下作戦をしたのも、オデッサ作戦を境に戦力は風前の灯であり無謀でも攻撃をしないことには敗北となってしまうことから、
まさに「背水の陣」として純粋に攻撃部隊として集め降下させたことに過ぎない。
筆者がこう断言するのもマットアングラー隊が追跡したホワイトベースの反応が消えると、
「フフフフ、ついにジャブローの最大の出入り口を
つきとめたという訳さ。消えた地点を中心に徹底的に
調査しろ。ジャブローの基地もろとも叩き潰してやる」
というシャアの宣言と上層部から送られてきた戦力を意味している、
「だがしかし、第一波の攻撃としては
少なすぎることをお詫び申し上げます」
というジオン士官との会話やジオン軍の状況を詮索するほど、ヨーロッパやキャリフォルニア、アフリカ戦線が苦戦していたことから無謀な作戦でありながら、疲弊した状況を少しでも打破出来るのでは?という部分から純粋に戦力として送ったと思えて仕方がない。
また苦戦しているのはホワイトベースも同様であり修理が間に合っていないことからホワイトベースは動かせず入り口を知らせるわけにはいかないので、宇宙船ドック入り口付近で敵が入って来ての対応と後手に回っては、上層部からの情報が入らないというジレンマ。
ドック入り口付近とは別にシャアのズゴックとゾックが挟み撃ちのように潜入したため、Gブルで待機していたアムロはGアーマーになりシャアのほうへ向かうことで、赤い彗星と思えるカラーのズゴックを見かけることから、
「赤い色のモビルスーツ?ザクじゃないけど。
赤い色のモビルスーツ、シャアじゃないのか?」
と驚いている隙に61型戦車を破壊!高速移動から右手のアイアンネイルをジムの腹に
突き刺すと同時に冷酷な笑みを浮かべながらガンダムとのにらみ合いをした後、
「間違いない、あれはシャアだ」
というセリフと同時にビームライフルを撃つと同時にシャアはジャンプで交わしズゴックの右腕に内臓されたメガ粒子砲でけん制しながら体当たりで接近戦に持ち込みガンダムの両手を押さえ込んでしまい、アムロもその動きに驚いたのか?
アムロ「シ、シャアか?」
シャア「さらにできるようになったな、ガンダム」
からガンダムが足蹴りで一旦距離を取ると同時にズゴックが両腕のメガ粒子砲を放つと同時にガンダムシールドで防ぐ部分にシャアも嘲笑するのですが、それを逆にブラインドとして使ったのか?シールドごとビームライフルで撃ち抜きシャアを慌てさせるので、
流石のシャアも他の攻撃に対し警戒出来ず、戦闘用ホバークラフト「ファンファン」で
仕掛けたウッディ大尉の攻撃が読めなかったことや、そんなもので!という感覚からか?
ウッディ「ジオンめ、ジャブローから出て行け」
アムロ 「ウッディ大尉、無理です」
シャア 「冗談ではない」
と交錯するようにズゴックのメインカメラを破壊するのと引き換えに右腕でコックピットごと破壊されてしまうことからその後の描写マチルダの結婚式の回想が際立ってしまう。
普通ならジャブローのような核ミサイルにも耐えられる要塞で宇宙船ドックからの攻略はカイがゴッグを一発で葬ったように待ち伏せされることのほうが大きいことから、敵が来るのがわかる一点集中攻撃は避けるべきなのですが、戦力が少数しか無いことを考えると、
今回のような降下作戦以外に攻略も戦力も無かったことから、無謀であってもせざるを得なかったジオン軍の厳しい内情を示しているのかもしれません。