機動戦士ガンダム第21話「激闘は憎しみ深く」は前回のランバ・ラル隊のホワイトベース強奪でのダメージがそれぞれ抜け切れず物資や人員、心意的な部分といろんなものが消耗しては、やり切れない怒りや悲しみが続くのでタイトル通りの感情しか生まれない。
特に今回は愛するラルの死で仇討ちに向かうハモンの心情に対する実情、ホワイトベースの現状が気持ちとは裏腹にリアルに描写されているため、結果から言えば単なる消耗戦にしかなっていないのですが、それでもやらなければならないところに戦争としての、
悲しく厳しい描写となっていることから、見逃せないシーンが連続している。
ではなぜこのような描写になってしまったのか?大人の目線でいろいろな部分を
紐解いていくことにしましょう。
目次
・ラルの仇討ち?何故ハモンは乏しい装備でも特攻を決意したのか。
・アムロの変化!リュウを通じたホワイトベースのあまりにも厳しい現状。
・ハモン敵討ちとリュウ特攻!後悔し切れない過ちと悲しみを乗り越えて。
ラルの仇討ち?何故ハモンは乏しい装備でも特攻を決意したのか
機動戦士ガンダム第21話はタイトルである「激闘は憎しみ深く」の悲しげな感覚から、
使い古したザク1機とマゼラアタックの砲塔部分四つという乏しい戦力で、前回戦死
したランバ・ラルの内縁の妻、クラウレ・ハモンは仇討ちをしようとするのですが、
何故ハモンはそこまでして特攻に近い作戦で仇討ちを決意したのか?
当時子供であった筆者には理解しがたい部分であったのですが、この点もハモンがラルのことを心底愛していたのと同時に部下に厚い信頼を受けていたからに他ならない。
これもハモンが残ったラルの部下に対し、
「よく準備をしてくれました。ガルマ様の仇討ち部隊として
地球に降り立ったものの、我々はまだ任務を終わっておりません。一見小さな作戦ではありますが、敵は連邦軍の最新鋭戦艦と
モビルスーツです。ジオンの国民は我々の戦果に期待しております。この作戦に不服がある者は参加しなくとも、
ランバ・ラルは怒りはしません、私もです」
と部下に対し無理強いをしないようにしながらも全員が特攻を覚悟していることや、
ランバ・ラルは私にもったいないくらい実直な男性だった。
あんな心を寄せてくれた人の為によしんば、砂漠で散るのも後悔はない。
と思いを寄せるくらいに覚悟を決めていたことからそう断言出来るのですが、
ハモンもまたラル以上に正式な軍人で無いにもかかわらず、同等の敬意があることを
1人1人の名前を言い激励をかける部分にしっかりと現れている。
この話ではそれ以上の深い部分は描写されていないのですが、クラウレ・ハモンはジオン・ダイクンの妻、つまりシャアやセイラの母であるアストライアが酒場の歌姫時代の同僚でありダイクン派としてアストライアを幼少時代から助け、彼女がダイクンと結婚後、
勤めていた酒場「エデン」の歌姫となりレジスタンスの闘士としてダイクンに仕えていたラルに対し強いあこがれを持っていたことからジオン・ダイクン暗殺後、ザビ家に抹殺されないよう生活を手助け、愛情が芽生えガルマ仇討ち部隊として同行することになる。
この点はあくまでも「THE ORIGIN」での展開なので全てが正しいかは不明ですが、第12話でラルが出撃するときにくちづけを交わすところから相思相愛であり、内縁の妻という位置づけであるのも、ガルマ仇討ちが成功したら結婚する予定だったのかもしれない。
そういった思いを考えるならばハモンに取ってはこの戦いは全てに対する決着であり、乏しい装備であっても、愛するランバ・ラルの思いを受け継がないといけない!という結束の証であることから、無謀とも思える戦いをあえて行おうとしているのです。
アムロの変化!リュウを通じたホワイトベースのあまりにも厳しい現状
決死の覚悟で挑まれ、目の前でランバ・ラルに自爆されたことから前回のようにリュウがアムロに独房の前で説得をしても、ひねくれた感じではなく非常に落ち着いている。
またリュウがホワイトベースでの白兵戦でランバ・ラルに撃たれたのも効いているのか、
リュウ
「・・・俺の事はいい。な、お、お前ブライトが
また独房に入れたのを腹を立てていないのか?」アムロ
「僕が?ブライトさんの処置わかります。怒ってなんかいません」
と周りの影響で少しずつ変化している描写が丁寧に描かれている。
現在のホワイトベースの状況はガンタンクがガンキャノンを肩車するシーンでホワイト
ベースのエンジンを修理するカイの描写に思わず笑いが出てしまったのですが、
その姿で笑いを取るような余裕も本来は無く、実際にはかなり深刻であり、
「かなりひでえな、この調子であちこちやられ続けたらたまんないぜ」
とあるように砂嵐に加えエンジンが不調な上に、部品も武器も底をつき、艦内でも
ガンダムがA、Bパーツに分離されている状態とかなり悲惨な状態になっている。
特に酷いのが人員の欠如。前回の白兵戦でリュウは負傷、何人かが戦死したことから、アムロを何とか独房から出せるように怪我をしている身体でリュウもアムロとブライトを説得するのですが、ブライトが意地を張っているのか?リュウが説得をするたびに、
「出す訳にはいかんよ。俺達が期待する態度を見せれば、
あいつはまだまだ自惚れる。野生の虎でも
檻に入れておけば、自分の立場がわかってくる」
と話が通じない猛獣といわんばかりに物言いするので、
「アムロが自分でわかるのを待つ訳か。言い逃れに聞こえるが
人間にはな言葉があるんだ。俺の元気な内に」
と自分の死期を察知したように物言いするのでミライも思わずびっくりしてしまう。
その後も自分がアムロと話をしたことで悟ったような感覚から、
「ブライトはアムロとゆっくり話し合った事ないんだろ?
それじゃあ虎はおとなしくにはならん、あっ・・・」
と大事なところで具合が悪くなってしまうのですが、その言葉の大事さも理解せず
ハモン以下!弱いところから特攻するので大事なことなのにうやむやになってしまう。
そんなこととは知らず、ハモンは死んだラルにアムロが敵とて出てきた場合、
「あの坊やが邪魔するような事がありましたら、
あなた、護ってくださいましね」
と何かを悟るように覚悟をしてはホワイトベースに特攻をかけそれと同時に、
「お前はパイロットだ。寝るのも仕事のうちなんだぞ」
と2回目に出会ったマチルダとのシーンを眠りながら回想するアムロとこれから起こる
悲劇を予想させるような描写をするので、何かしら意味深なメッセージに思えてくる。
またハモンだけでは戦術を取れるほど優れているわけではないので、ハモンを慕っているタチ中尉が補佐に回り、錐(きり)の戦法と呼ばれる突撃攻撃法で現在の戦力でも確実に仕留められるように作戦を考えることから、
「第一波の攻撃を敵の最も弱いと思われる所に掛けます。
ほかには一切目を向けずただ一点を抜く。我々の生還は不確実で
ありますが、間違いなく木馬を撃破する事ができます」
と称しこれに対しガンダムが出てきても二段構え三段構えでマゼラトップが阻止しながら、爆弾を積んだカーゴをホワイトベースに特攻させるという作戦を組むので敵ながら手ごわく、人員、補給全てが足りず意固地になっているブライトには痛い作戦である。
結局はアムロを出さないと対応出来ないことから、
「やらせたくなくてもやるんだろ」
と業を煮やすようにセイラにあたってしまうのですが、今までのツケが回ってしまったのか?この後に最大の悲劇が起こり、取り返しのつかない後悔に見舞われるのです。
ハモン敵討ちとリュウ特攻!後悔し切れない過ちと悲しみを乗り越えて
機動戦士ガンダム第21話「激闘は憎しみ深く」の見どころは、決死の覚悟でホワイトベースに爆弾入りのカーゴをぶつけるために、二段構え三段構えでザク1機とハモンを含めたマゼラトップ4機でガンダムから守りきれるか?という部分が醍醐味なのですが、
独房に入りブライトの許可が下りない状態からアムロをガンダムに乗せ対応させるまでの描写が実に計算されているので、大人になって見直すほど背筋が凍るような感覚になる。
最初はザク1機と思わせカイ搭乗のガンキャノンをおびき寄せ、ザクを運んでいたトラックの車体部分、サムソントップ2機まで応戦させるので、なりふり構わない状態がわかるのですが、それ以上に以前壊れたシャフトの調子が悪くガンタンクが起動停止!
援護が出来なくなりザクにホワイトベースをマゼラトップ砲で破壊させてしまう。
このためガンダムを出さないといけない状態になりリュウの真剣なまなざしから、
「そ、それよりもア、アムロを独房から出すんだ。責任は俺がとる」
とセイラに言いセイラもそのことで全滅の危機を感じたのか?ブライトの呼びかけに、
「アムロの独房のドアナンバーを教えてください」
神妙な顔で訴え「このまま意地を張って死んでもよくって」という感覚で
にらむことからブライトも折れてしまいアムロを独房から出してしまう。
さらにガンダムは現在でも修理中であり、メカマンのオムルも、
「メカマンがみんな怪我をしていて修理が」
と弱気になることからアムロにしか出来ない空中換装を見通したことになっているため、何もかも思い通りにいかないこと部分をアムロの機転で展開していくことから、
「ともかく、コアファイターで出ます。修理中で
ガンダムにドッキングしていないんです」
という臨機応変な態度がさらに調子付かせると感じたためか?
セイラ
「ブライト、ミライ、コアファイター出ます。よろし?」
ブライト
「やらせたくなくてもやるんだろ、セイラ」
セイラ
「ブライトさん」
ブライト
「ガンダムがなければ立ち向かえんというのに」
とここでも業を煮やすような感覚でイラ立ちを隠せない。
この後でも一体どちらが正式な軍人なのか?わからないくらいメカマンのオムルが修理したガンダムパーツをアムロの指示で射出したり、人員不足を物語るようにフラウ・ボゥまでもがリュウの指示で機銃を撃つことになるのですが、ここでようやく第17話から、
第20話まで視聴率向上か?と思われていた空中換装シーンからのガンダムに変形した後すぐにサムソントップ1機を破壊!アムロの本領発揮となる。
ここからホワイトベースを狙うザクを撃退しようとするのですが、タチ中尉搭乗のザクはヒートホークで接近戦に持っていくので傷つけないように接近戦に持ち込もうとする。
しかしそれを見通していたハモン以下、爆弾を積んだカーゴとその上に乗ったマゼラトップ砲はそのままホワイトベースに特攻をしてくるので、アムロもそのことに気づき、
「ん?待てよ、これは特攻するつもりじゃないのか?
とすれば、あの中は爆薬で一杯のはずだ」
とニュータイプの片鱗を見せるようにカーゴを両手で止めるので音楽が変わると同時にハモン達マゼラトップが上空に飛びタチ中尉の乗るザクに腰部分を切り裂かれ大ピンチ!
これをチャンスと思ったことからマゼラトップ砲がガンダムを狙い撃つのですが、襲ってきたザクをヒジで引っ掛けて盾にしながら撃ってきたマゼラトップに投げて同士討ち。
そういった奇跡的なことをするのでハモンも冷や汗タラタラで恐怖したのか?
「ガ、ガンダム、二人のパイロットを同時に討ち取るとは。
さすが、私が見込んだ坊やだけのことはある。しかし」
とガンダムの背後を取り画面が真っ赤になる描写で一瞬凍りつく場面となってしまう。
またハモンがこの後放ったセリフ、
「いくら装甲の厚いガンダムといっても、これだけ近ければ
持ちはすまい。そしてガンダムとカーゴの爆発力は木馬をも」
とアムロもハモンの殺気と察知したとき、
「ほんと、好きだったよ、坊や」
と2発ぶち込まれあと一撃で死ぬ!という地点でコア・ファイターで特攻したリュウとぶつかると同時にホワイトベースのクルーの様子が描写されることで重要なシーンであることを位置づけている。
このことで今までガンダムに乗ったアムロを出すことで必勝となっていた戦術は自分達のうぬぼれでありリュウが特攻しなければ勝てなかったため、この後全員が死んだ現場に立ち寄り誰もが自分のせいだ!と涙しながら後悔をすることになってしまう。
ガンタンクの操縦手の代理として乗っていたジョブは自分が乗っていた操縦席に乗ることを許可しなければといい、砲撃手だったハヤトは強制分離して発進を認めなければと、
それぞれが己の未熟さを認めながら、ブライトもアムロのことで心配をかけなければと誰もが号泣しながらリュウの言っていたことを回想するのですが、リュウの存在は大きく、
「か、勘弁してくれ、リュウ、勘弁してくれよ。な、お、俺達
こ、これからどうすりゃいいんだ?え?リュウ、教えてくれ。
教えてくれんのだな、もう」
とブライトが錯乱するように積み重ねられてきたリュウの献身さや相談役としての役目の大きさを物語っているので、強い後悔を抱きながらも大きな節目として成長の機転としてジオンを倒し戦争を終わらせる決意に変わっていくのです。