機動戦士ガンダム連邦軍の軍規や階級から判るルナツー脱出作戦の実情

機動戦士ガンダムの第4話であるルナツー脱出作戦は、展開が意外と地味で複雑であることから、劇場版ではほとんど語ることもなく、子供からすればガンダムの活躍が少ないことから大きく短縮されている点が否めないのですが、ここをしっかりと読み解いていくほど、


地球連邦軍の軍事的背景が見られるので、大人であるほど考えさせられる問題である。


むしろこの話をしっかりと理解出来るほど、連邦軍の組織内部の実情や問題点がヒシヒシと見えてくるので、ルナツーの要塞司令官兼駐留艦隊司令官であるワッケイン少佐の最後のセリフである「寒い時代」と感じる部分が、富野方式で複雑に盛り込まれている。


特にTV版では機動戦士ガンダムでの設定を紹介するシーンが多く、対話方式でこれらを無理なく演じていることから、大人にしか理解出来ない事情を中心に紐解いていきましょう。

目次

・ワッケイン司令から突然の拘禁指示?ルナツーの連邦軍の階級実情とは。
・ルナツーの裏をかくシャアの奇襲と大人の事情によるガンダム紹介設定。
・パオロ艦長の死!ワッケイン司令が語る「寒い時代」の本当の意味とは?

ワッケイン司令から突然の拘禁指示?ルナツーの連邦軍の階級実情とは

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ルナツー脱出作戦では単に敵と味方での戦いという感覚だけでなく、地球連邦軍の内情や問題点を通しながら、シャアがホワイトベースとガンダム奪取を目的にしている。


こんな感じで進んでいくだけでなく、知らないと理解しづらい専門的な用語や内容を、富野由悠季氏が得意としている対話方式で自然に演じさせているので、コアなファンであるほど、思わずニヤっとしてしまうシーンが多くなっている。


サイド7から避難した民間人を、安全なルナツーで保護して欲しいとブライトがワッケイン
少佐に嘆願するのですが、軍の最高機密事項であるAAA事項を破ったこと。

つまりホワイトベースやガンダムなどを民間人に使わせたことが問題となり、軍法会議にかけることから、冒頭からいきなり拘禁され、ホワイトベース全員の怒りを買うことになる。


アニメではアムロやブライトなどホワイトベースクルーの視点で語られるので、視聴者としては、シャアの攻撃を辛くも退ぎながら、ようやく避難出来たのに、こいつらはアホなのか?と子供のころの筆者は、ワッケイン少佐が何となく大嫌いだったのですが、実はここにも、


地球連邦軍の内情が所どころに問題点として現れているのでファンほど見逃せないと思う。


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ルナツーは月と地球を挟んで正反対にある衛星であることから、第2の月(ルナ)という意味で資源衛星として地球連邦軍が宇宙で唯一管理していることから、非常に重要な場所だ!と感じるかもしれませんが、実際には地球にあるジャブロー制圧までの拠点として、

距離としても遠すぎることや、核攻撃も耐える硬く厚い岩盤層で出来ているために
資金難のジオン軍からすれば、費用対効果の悪さからあえて支配する理由が無い。


簡単に言えば「ルナツーは攻略する価値も無い」ということなのですが、肝心の連邦軍は、コロニー配置からの全体構図として、目立つとジオンに攻撃されるという感覚のほうが強いので、保持しながらもことなかれ主義で保とうとする保守的思考が強くなっている。


実際には資源や装備は充実しており、シャアも簡単には攻められないと悟っていたため、重要な資源衛星を管理するのであれば、軽視するのも枯渇問題にもつながり、ルナツーで一番偉いワッケインが少佐という佐官でも一番下なのは、理屈としてもおかしいので、


本来なら将官である准将から少将でないと、権限や待遇としても不相応であろう。


実際には機動戦士ガンダムを2周目として見ないと気づきにくいのですが、この点でも
ルウム戦役で優秀な上官である将官や佐官が戦死したことで、下っ端が割に合わない不遇
の待遇を受けている
ことや、ゴップ提督以下「ジャブローのモグラども」保身派の、

面倒なものは下っ端に任せる」という背景がモロに出ているため、この点が問題点として
ワッケイン司令がことなかれ主義で軍規に従う方針が頑固にまで描かれている。


ワッケイン司令の人柄を見ると、軍規に従う厳格さが強いイメージですが、実際にはパオロ艦長やブライトの説得をしっかりと聞いた上で、第4話の最後でも柔軟な対応を取っていることから、連邦軍でも数少ない尊敬出来る人として後々語られている。


また彼はレビル将軍の配下であり、ルウム戦役で提督としてシャアに戦艦を撃墜されている他、相対するゴップ提督とは立場上、仲がよくなかったのでは無いか?と思えてくる。


これもジオン軍最終要塞ア・バオア・クーでゴップが元帥となり連邦政府要人との会談で、

「彼は必ずしも有能な軍人ではない」


とあることから、レビル派だから左遷!という感覚で厄介払いされていた可能性が高い。


ブライトやミライが、ワッケインの頑固な軍規を守る行動しか対応しないことに激怒するのも、軍での裏事情が見えず、エゴイズム(利己主義)による感覚しか理解出来ないのですが、劇場版ではこれら全てがカットされ、パオロ艦長の死と補給のみに留まるので、

隠されるほど、地球連邦軍の問題点が隠蔽されているように思えて仕方がありません。

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ルナツーの裏をかくシャアの奇襲と大人の事情によるガンダム紹介設定

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ルナツー脱出作戦を何度も見返してみると、地味ながらも世界観や独自の用語を自然に理解出来るように、対話方式で理解しづらい部分をしっかりと描写しているので、大人であるほど、この点に着目するとコアな楽しみ方が出来ると思えてくる。


シャアはドズル中将の命令で、ホワイトベースとガンダムを奪取することを最重要項目としながら、強固なルナツーの攻略と共に、電波や誘導兵器が利きづらくなるミノフスキー粒子の効果的な利用方法を部下に説明したり、ワッケイン司令に拘禁されたアムロ達は、

不味そうな宇宙食(?)を食べながら、食べることの大事さやガンダムの強さが戦うことで搭載されている学習コンピュータが的確に判断して、最適なパターンで対応するため、ザクよりも優れているなど、コアな部分を物語っている点はファンであるほど見逃せない。


またルナツーの軍事形態がことなかれ主義で、ムサイ1隻だけで仕掛けるわけがないという心理を見抜いたことで、シャア達がノーマルスーツと呼ばれる宇宙服で直接、機雷を設置しにいくという原始的な作戦に出るなど、戦争にはセオリーは無いことを示している他、

ルナツー内は無重力であることを理解させるために、停止しているシーンやふわっと
浮くシーンなどを描写することで、世界観を物語っている。


特にシャアが機雷での奇襲で牢屋のロックが外れ、アムロとブライトがホワイトベースに乗り込む際に、連邦兵にダブルでキックするシーンなど、無重力であることを自然と描写しているのですが、軍の規定に従う連邦兵達とそれを良しとしないホワイトベースクルー、

その間に入って説得をするパオロ艦長の関係性から、連邦軍の実情が見えてくるため
仲間が誰もいない孤独感や、理不尽なことで追いこまれる切迫感が伝わってくる。


またシャアも第2話で、ルナツー突入作戦を遂行しながら、セイラとなって成長した妹アルテイシアのことを考えているシーンを描くことで、何かしら意味深の部分を思わせ、後に続くザビ家復讐への伏線のように語られるので、非常に人間味のあるシーンが続く。


こんな感じでお互いの立場からの違いから、それぞれの思考が交錯しながら、静かな流れでシャアとの攻防につながっていくのですが、このような描写はこれからも出てくることから、地味な話であるほど、富野氏が何を描きたかったのか?

そこを見ると、そのキャラが物語っている意味や心情が理解出来るかもしれませんね。

パオロ艦長の死!ワッケイン司令が語る「寒い時代」の本当の意味とは?

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子供として見た第4話はルナツーに侵入しようとしているシャアのザク以下3機が、それを阻止しようとするガンダムに対し、どんなに強固な装甲も溶かして切る「ヒートホーク」が初出場になることから、これをどうしのぐのかが、見どころでもあるのですが、

実際には、ここまで寛大な態度で対応したパオロ艦長の死とその後のワッケイン司令の
本音が、戦争への懸念さや、ホワイトベースクルーへの大きなメッセージとなっている。


シャア達が仕掛けた機雷によって、ムサイを撃墜しようとしたマゼラン艦が入り口を塞ぎ
ホワイトベースが主砲で排除することから、その衝撃でパオロ艦長が殉職となってしまう。


パオロ艦長は宇宙葬としてカプセルに入れられ、地球へ発射されるのですが、アムロは行方不明になった父、テム・レイのことを考え、ホワイトベースのクルーは人の死や戦争に対する将来を考えさせられるので、このような細かい描写もガンダムでは見どころである。


また最後にワッケイン司令が部下と宇宙を見ながらのセリフで、

「ジオンとの戦いがまだまだ困難を極めるという時、
 我々は学ぶべき人を次々と失ってゆく。寒い時代だと思わんか?」


という部分をパオロ艦長の死のことを示し、自分が置かれている立場などから、ホワイト
ベースを見送るという感覚で語られているのですが、これが劇場版だと描写の違いから、

「ジオンとの戦いがまだまだ困難を極めようという時、
 我々は素人さえも動員していく・・・寒い時代だと思わんか?」


と素人同然の少年少女達に戦争を任せる不甲斐なさを描いているため、護衛として付けたサラミス艦1隻の様子が、軍事的要素で宇宙で目立つわけにはいかないという部分を、静かながら意味深に物語っている。


筆者としてはTV版のほうが、パオロ艦長おつかれさまでした安らかにお眠り下さい。という感覚が、第4話では強いのですが、この点もまた、ルナツーの立場から死守しないといけないワッケイン司令の立場を考えると、現実には難しい問題なのかもしれません。

レクタングル(大)
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