機動戦士ガンダム第40話「エルメスのララァ」は結果としてララァがエルメスで地球連邦軍のサラミス艦を合計4隻撃沈していることや、交戦という意味では初陣であることからララァの戦いを中心に描かれてはいるのですが、実際にはギレンが第3号密閉型コロニーの、
マハルの疎開を中心にそれぞれの立場で前フリや前哨戦として描写されるので興味深い。
特に今回はザビ家の内紛を思わせるものやララァの戦闘での意外な弱点、星1号作戦と
いった具体的なものを中心にマグネットコーティングと呼ばれる独特の技法など、
TV版でしか判明されないものがしっかりと描写されているため、今回も大人の目線で
1つ1つ紐解いていくことにしましょう。
目次
・ザビ家内紛?父デギンと長兄ギレンの確執!キシリアが動く政治的背景。
・エルメスのララァ快挙!サラミス艦4隻撃沈の裏に隠された意外な弱点。
・ガンダムに施されたマグネットコーティング!アムロが驚いた原理とは。
ザビ家内紛?父デギンと長兄ギレンの確執!キシリアが動く政治的背景
機動戦士ガンダムも第40話と物語りも佳境に入ったからか?独裁を求めるザビ家としても内紛が見え始めていることを今回の話で感じられるのですが、これも月の裏側にあるグラナダにいるキシリアとギレン総帥が管轄する宇宙要塞ア・バオア・クーの間である最終防衛線。
この部分を地球連邦軍が攻めてくることを考えていることからそれぞれの考えが政治的背景としてさぐられたくない腹を探りながら隠し合うという、陰湿なものから結果として確執につながってしまうことになってしまう。
政治的背景の筆頭としてキシリアがいる月(グラナダ)で戦死したシャリア・ブルの戦果をシャアの報告から推測だ!と険しい顔をするのですが、ギレンの作戦を聞いた時にジオン軍の要である宇宙要塞ア・バオア・クーが最終防衛線での目標であることを読み取ると、
キシリアも重い腰を上げて動かざるを得なくなることを思わせる描写として物語っている。
普通ならギレンが管轄しているア・バオア・クーを何かしらの理由で消耗を待ったほうがいいのですが、それではジオン国民の支持が得られないところか総帥を見殺しにした卑怯者ということになるので、このタイミングを逃してはいけない!と動くことにしたわけですが、
これも最終防衛線に配置された第3号密閉型コロニー「マハル」の住民を無理やり疎開させこれ自体を強力なレーザー兵器とすることで、ギレンが何を考えているのか?察知したことから、ザビ家として動かざるを得なくなってしまったのだと筆者はそう考えている。
実際にギレン総帥の一方的な説明と承諾をデギン公王に求めながら、デキンには何も言わせないままに、月とア・バオア・クーは最終防衛線の重要性やソーラ・システム(以後ソーラ・レイと改称)を使い連邦軍壊滅を狙うことで使用許可と公王の答弁を求めるのですが、
現実にはお飾り同然の父デギンをいい様に利用しているだけの答弁であることからデギンもそのことを察知しており、切り替えしとしてギレンをヒトラーの尻尾と卑下している。
ギレンとしては承諾を前提にデギンに対し公王としての勤めをさせており、
「せっかく減った人口です、これ以上増やさずに優良な人種
だけを残す、それ以外に人類の永遠の平和は望めません。そして、その為にはザビ家独裁による
人類のコントロールしかありません」
ともっともなことでごまかすのですがデギンとしてはギレンが独裁政権を急ぎすぎて
失敗したアドルフ・ヒトラーの末路をたどっているように思え、忠告をするように、
「ああ。独裁者でな、世界を読みきれなかった男だ。
貴公はそのヒットラーの尻尾だな」
と独裁の末路は悲惨な最後でしかないことを語っているので、ギレン自身父デギンはジオン・ダイクンが建国したジオン共和国の意思を尊敬し、選ばれた民として国民を納得させることを方便としているためジオンを称える公王制を用いてのザビ家の独裁であることを、
デギン自身もギレン、キシリア共々注意勧告として釘を刺すような視線で物語っている。
しかしギレンにはそういった部分よりも自分での独裁政権を主体としているため、
「はい。絶対民主制は連邦ごとき軟弱を生むだけです。
それでは人類は共食いになります、今度の戦争のように。ま、勝ってみせます。ヒットラーの尻尾の戦いぶり、
御覧ください。わたくしはア・バオア・クーで指揮をとります」
と颯爽とするので親の心子知らずとはこういったときに使うものなのか。
これもデギンが最後にしみじみと哀れなものを見るように放った、
「・・・ヒトラーは敗北したのだぞ」
という部分から今の戦力では敗北は目に見えているため以後に和平交渉をしたのだと思えるのですが、独裁制と軍政からのエリート主義しか頭になかったギレンとしては、そういった父の気持ちとは裏腹にソーラ・レイの存在があの悲劇を生み出す元になってしまうのです。
エルメスのララァ快挙!サラミス艦4隻撃沈の裏に隠された意外な弱点
父デギンと兄ギレンの確執が広がる中、スーペースコロニーマハル内の強制疎開の影響を考えてか?戦果を上げないとジオン国民の評価が下がることを懸念してか、キシリアも部下のシャアに命じ、ララァのエルメスを中心に戦果を上げるためにリック・ドム2機と出撃!
現実には戦艦を一撃で破壊する戦闘力を持っていても意外な弱点があったことからララァ自身、戦闘に集中出来ず恐怖と不安で一杯になる部分からシャアも部下達を叱咤してしまう。
ララァに取っては交戦という意味では初陣になり、階級も少尉と下っ端であることから歴戦パイロットであるバタシャム中尉以下2機のリック・ドムを先行させ、自分は後方で援護という形で小隊を組み、シャアのザンジバルのJ型ミサイルで攻撃を仕掛けては殲滅させる。
そういった描写でマゼラン1隻サラミス2隻の最小戦闘配置なら楽勝!のはずだったのですが、現実にはサラミス1隻をビットの圧倒的戦闘力で簡単に一掃してしまったことから、
「・・・エルメスのビットが?ま、まるでベテランパイロット
じゃないか。あれが初めて戦いをする女のやることなのか?」
ということからララァの戦闘力に怖気づいてしまい、エルメスが前面に出てしまう形となることから、恐怖と動揺から思うように集中出来ず、サラミス1隻だけに手こずってしまう。
これもエルメスのサイコミュ能力から周りに守ってもらわないと集中出来ない部分やシャアが守ってくれる!という安堵感があるため、このことを見通していたシャアはゲルググで出撃した際、リック・ドム2機が後方支援をしていたことから激怒してしまい、
「ん?どういうことだ?
バタシャムめ、貴様が前に出るのだろうが」
と「前へ出ろ!」という指示をするのですが、この2人の動作に対しララァは、
「射撃をあてにしてはいけないということ?」
と前向きに考えてしまうので、この点が素直というかいじらしいというか。
戦果としてはアムロとの戦いと合わせ合計4隻のサラミスをたった1日で撃沈するのでキシリアもその戦果に今後の期待を添え握手をするのですが、バタシャムが軍法会議を覚悟してリック・ドムを後方に置くことを許可してしまったシャアの行動が失態につながるとは、
エルメスの性能を考えるとしなかったほうが良かったと思えるのは筆者だけでしょうか?
ガンダムに施されたマグネットコーティング!アムロが驚いた原理とは
機動戦士ガンダムでは話の筋の間に前フリとなるものが関連していることから今回でも連邦軍の各艦隊がそれぞれ定められたコースを取って攻撃目標とする「星1号作戦」や劇場版では黒歴史のように抹殺された電磁工学の新鋭モスク・ハン博士とアムロのやりとりなど、
今後の展開に関わる重要な部分が同時進行として描写されるので見どころとなっている。
本来ならマグネットコーティングはアムロに取ってうれしい行為ではあるのですが、
「ホワイトベースのメカマンはガンダムから離れろ。
以後の作業は我々に任せてもらう
マグネットコーティング、急げ」
と赤いつなぎを来た威圧的な人の中心で左手で制止しては強引に作業を進めるので、アムロも困惑を隠せないのですが俺は味方だ!という気さくな感じでアムロの肩に触っては、
「貴様の報告を読んだから俺が来たんだ。
ま、失敗したからって恨むなよ、なにしろ
ロクなテストもしないで使うんだからな」
とガンダムの動きを早くする処置をするのですが、劇場版では彼の存在どころかさらっとしかマグネットコーティングの存在が出てこないので、彼の独断である可能性が高い。
またマグネットコーティングの説明も当時の視聴者であった子供達に理解出来るように、
「ガンダムの駆動系を電磁気で包んで動きを
早くするのだとさ。ま、油を差すみたいなもんだな」
とブライトが語っているのですが、ガンダムはミノフスキー粒子とIフィールドの相互作用によってモーターの軽量化と高出力化出来る「フィールド・モーター」を各関節の主体としていることから電気系統の調整や内部部品の交換さえ満たせばパワーアップは可能。
そういった原理で関節が可動する摩擦面に磁力コーティングを施すことで摩擦抵抗を減らし摩擦が極力ゼロに近づくことが可能となることから、従来の3倍の反応速度となったのがマグネットコーティングの理論となっているので、それが本当なら恐ろしい原理である。
実際にはゲルググと同じ反応速度であった1.5秒という方向転換速度が0.4秒縮まり
わずか1.1秒となっていることからゲルググに搭乗しているシャアが驚くように、
「ガンダム、昨日までのガンダムとまるで違うぞ」
からララァの足を引っ張るだけであり、シャアのための挿入歌「シャアが来る」の
2番を地でいくような感覚を思わせるように、
「一人で死ぬかよ奴も奴も呼ぶ
狙いさだめる シャアがターゲット」
という歌なのでゲルググの左肩が吹っ飛ぶというミスマッチとなっていることから、
「大佐、どいてください、邪魔です」
という情けない負けっぷりとなりガンダムに勝てるわけがない展開しか生まれてこない。
ただ勘違いして欲しくないのがマグネットコーティングはあくまでもスピードだけであり、これらを使いこなせるニュータイプのアムロだからこそ、シャアを圧倒してはララァに対し精神的負担をかけることで、しのげた結果に過ぎない。
そのことに関しブライトを中心とした会話中の本音、
「ひどく勘がいいというか先読みをする時があるな?
アムロは違うんだよ。かといって、以前マチルダさんが
言っていたようにアムロがエスパーだなんて話は信用せんよ。
人間がそんな便利に変わる訳ないんだ」
やモスク・ハン博士の本音。セイラにニュータイプとしておだてられるシーンでもてあましている感じを見るほど、ニュータイプでは無く人間としての成長を見て欲しいというアムロの願いが描写されているのですが、そういった気持ちとは裏腹に今回のアムロとララァの、
戦いはそういった前哨戦に見えてしまい「呼んでいる?」感覚から後悔してしまう
悲惨な出来事を向かえるのもニュータイプとしての悲しい運命なのでしょうか。