機動戦士ガンダム第35話「ソロモン攻略戦」は別名チェンバロ作戦としてルナ2に配置されていたティアンム艦隊の動きを悟られないために、ホワイトベースとワッケイン少佐率いる第三艦隊をおとりにして新型兵器「ソーラ・システム」を照射してソロモンを攻略する。
こういっためまぐるしい展開から地球連邦軍のティアンム中将とソロモン要塞の指揮官であるドズル・ザビ中将との戦略を中心にいろいろな場面で人間描写が繰り広げられることから意外と忙しい話となっているのですが、大人目線で1つ1つ分析していくほど、
敵だけでなく味方にも裏事情があるためファンほどこの点を見逃さないほうがいい。
特に今回はソロモン攻略線の前哨戦として連邦軍が見出した戦いの基盤が捨て駒として
見られることから、今回も大人の目線で紐解いていくことにしましょう。
目次
・ソロモンとホワイトベースは捨て駒?補給と配置から読む両軍の裏事情。
・チェンバロ作戦開始!それぞれの人間関係から感じ取れる職務事情とは。
・ソーラシステム発動!ソロモンへの決定的切り札となった作戦内容とは。
ソロモンとホワイトベースは捨て駒?補給と配置から読む両軍の裏事情
ソロモン攻略戦は物語後半での地球連邦軍逆転の第1弾として描写されているものであり、地球連邦軍が宇宙で唯一支配しているルナ2にティアンム艦隊を集めることでドズル・ザビ中将のソロモンにけん制をかけると同時に攻略戦の切り札となっているのですが、
これもまた裏を返せば地球連邦軍ゴップ提督とジオン軍ギレン総統からすればどちらも捨て駒であることが、大人の目線で見ると理解出来るのでお互いに腹黒さを感じてしまう。
この理由もゴップ提督は第31話でソロモンを落とせば国力の無いジオン軍は和平交渉を持ち込んでくると公言しているもののティアンム中将はレビル将軍の右腕。さらに厄介者だと思っていたホワイトベースもレビル派と見ていたことやチェンバロ作戦はよくて五分五分。
後は弱ったところをゴップ提督の官僚思考から漁夫の利で和平を狙っていた可能性が高い。
またソーラ・システムという新型兵器を使うと言っても戦力はハイロット熟練度の低い最新鋭モビルスーツ部隊ジムとボールであり、その差を大規模な軍団で形成するという確実性が乏しいものであることから力押しというわけにもいかず、これらを確実にするには、
強力なおとりが必要となるため立場や階級が低いということで納得させたのか?ブライト中尉以下ホワイトベースとワッケイン少佐以下マゼラン艦1隻とサラミス3隻の第三艦隊で15分だけ陽動を行い、ソーラシステム発射までの時間を稼ぐことになってしまう。
このことでホワイトベースは輸送艦コロンブスから補給物資を受け取り、ブライトが挨拶と称し
ワッケイン少佐と接触することになるのですがワッケインがブライトに言うように、
「司令はやめてもらおう、お偉方が集まれば
私などあっという間に下っ端だ。」
というように今回は捨て駒という感覚で下っ端がおとりをするという何とも連邦軍らしく下っ端ほど損をする状態が見られるのですがブライトがワッケインに対し言ったセリフ、
ブライト
「そうですか、大変な任務ですね。我々にできますか?」
ワッケイン
「君自身、そんなことを考えられるようになった
のもだいぶ余裕が出てきた証拠だな。大丈夫だ」
と自分達は完全におとりで上官達に都合のいい様に使われているのに余裕を持って接することからワッケインも頼もしく思うのですが、実際にアムロ以下、ソーラシステム発射後にソロモンに到着して対応しているので、いい様に使われているはずが頼もしく見えてしまう。
またソロモンを指揮するドズル中将側もギレンからすれば完全に捨て駒であり戦力の増援を頼んだのに到着したのはパプア補給艦1隻に試作段階のビグ・ザムのパーツだけなので、
「ええい、兄上は何を考えているのだ?今ある
リック・ドムでは数が足りんのだ。新鋭モビルスーツの
一機をよこすくらいならドムの十機もまわさんのか?」
とかなりご立腹であり周りの兵もおびえるばかり。
表向きではビグ・ザム1機で艦隊2~3に匹敵すると計算したと言われていますが
実際には試作段階で終わっていることから完全に欠陥品であることが判明している。
この点に関しては次回にお話しするので割愛致しますが、後日談ではギレンはソロモンをあまり重視しておらず、ゴップ同様!ティアンム艦隊との戦いが良くて互角であれば、最終要塞であるア・バオア・クーだけでも十分対応出来ると思っていたことから捨て駒である。
結局、先の先を読めなかったドズル中将はティアンム艦隊の動きを掴めずキシリアの増援を断ってまで意地を貫いたのですが、これだけ見ても損を見るのは下っ端と現場の人間であることから、戦争というのは無常あることを再確認させられただけなのかもしれません。
チェンバロ作戦開始!それぞれの人間関係から感じ取れる職務事情とは
ソロモン攻略戦ではティアンム中将とドズル中将との戦略の読み合い中で同時進行としていろいろな人間関係が交錯するので、そこから感じる職務事情も目が離せない。
まず最初はサイド6を出航するシャアとそれを見送るカムラン監察官との会話。
シャアとしてはこれからの戦いでニュータイプであるララァが重要な鍵となるので彼女を受け取りに来ただけなのですが、カムランからすればジオン軍のせいでミライの父を戦争で失ったことによりミライとの決別になったように思えたことから職務を忘れ嫌味として、
「早く出て行ってもらいたいもんだな。二度と来てもらいたくない」
と純粋に怒りをあらわにしてしまうのですがシャアもとばっちりと感じたのか?
「言葉には気をつけたまえ、ミスター・カムラン
「サイド6が生き延びてこられたのもジオンの
都合による。その辺をよーく考えるのだな」
と中立でありながも生かされているということを冷静に言うのでカムランもその勢いを止めてしまうのですが、それ以上にララァが無重力の中で飛んでいく部分を美しい描写で魅了していくシーンがやけに印象的。
それに合わせシャアもカムランにララァのことを聞かれたことに対し、
「私の妹、とでもしておいてもらおう」
と何かしら意味深な対応をするので今後の展開を期待させるものを予感させる。
またシャア達はキシリアの命令で、
シャア
「ソロモンが救援を欲しがっている?」
ジオン兵
「はい。暗号電文で細かいことはわかりませんが、
ともかくキシリア様の命令です。ソロモンへ向かえ、との事です」
ということからドズル中将の応援に駆り出されるのですがドズル中将が発するように、
ラコック副官
「第七師団に援軍を求められましては?」
ドズル
「キシリアにか?フン、これしきの事で。国中の物笑いの種になるわ」
とあるようにドズルとキシリアは犬猿の仲であることからドズルの性格を考えるとどんなに不利になってもキシリアに頼む道理もなくキシリアもドズルがいなくなることで優位になることから、形勢が悪化したときにラコック副官が通信したのだと思えてくる。
この理由も副官のラコックは実質上ドズルの右腕であり実務を仕切っていることやドズル自身もコーヒーを頼むくらい信頼していることから内情を良く知っていた可能性が高く、どんなに追い込まれても「武士は喰わねど高楊枝」を決め込む性格を知っていたことから、
キシリアの命令としてシャアに応援を送った可能性が高いと筆者はそう分析している。
また肝心のドズルも連邦軍のさまざまな戦術により裏をかかれ慣れないモビルスーツ戦をソーラシステムと大規模な軍団で形成することで押されてしまったことから、戦いは数!という持論通りに不利となるため妻のゼナと娘のミネバ達を避難させざるを得なくなる。
「このソロモンが落ちるものか。万一だ、万一の事を
考えての事よ。ようやくにも手に入れたミネバの為」
と口では強がりを言っているものの現実には奇襲に加え数に押される戦いとなってしまったことから、ソロモンを放棄してモビルアーマービグ・ザムでの戦いにつながってしまう。
ソロモン側の隠された裏事情と同時に連邦軍側も指揮官の階級が下になるにつれ最前線での戦いからしんどさしかないことから、宇宙適正が低いガンタンク搭乗のハヤトが被弾。
最初は現状を認められなかったハヤトが流血が止まらないことから撤退となってしまい、
「ガンタンク着艦しました。損傷度B、パイロット負傷しています。
戦力はガンタンクが後退したことにより11パーセント低下しました」
ということから心配したフラウが医療班の手伝いにいくため重力ブロックで着替えてからハヤトの輸血をするのですが、ここでもまたハヤトのアムロに対する劣等感からくる悔しさでフラウとの仲が急接近していく部分も見逃せない。
ハヤトからすれば弱音でつい吐いてしまった、
「く、悔しいな、僕だけこんなんじゃ。セイラさんにも
カイさんにもかなわないなんて。な、情けないよ」
にただ単に聞いてほしかっただけだと思えるのですがフラウは思わず、
「なに言ってるの、ハヤト。立派よ、あなただって」
と無駄に励ましてしまうのでこの点からプライドを逆立てることになり、
「やめてくれよ慰めの言葉なんて。こ、こんな僕だってね、
ホワイトベースに乗ってからこっち、アムロに勝ちたい、
勝ちたいと思っててこのざまだ」
と本音をぶちまけるのでフラウもそのことに対し、
「ハヤト。アムロは、違うわあの人は。私達とは違うのよ」
と最近付き合いが無かったこともあってか?完全に別世界であることをいうことから
作戦前にアムロに食事を持ってきた兵士の前フリがここで重くのし掛かってしまう。
こんな感じでそれぞれが交錯する中チェンバロ作戦は遂行されていくので、戦いに勝ってもそこに何が残るのか?改めて考えさせられる描写が多いですので、その戦いの先に何があるのか?しっかりと見極めないとむなしいだけの戦いでしか無いのかもしれません。
ソーラシステム発動!ソロモンへの決定的切り札となった作戦内容とは
12月24日。ソロモン要塞攻略のためのチェンバロ作戦によりホワイトベースとワッケイン以下第三艦隊が15分間陽動をすることでおとりとなり、その間に新兵器であるソーラ・システムでソロモンに照射後、ティアンム艦隊の物量作戦でソロモンを殲滅する。
このような流れで戦いは進んでいくのですが、現実には最前線にいるホワイトベースとワッケイン少佐以下マゼラン艦1隻とサラミス3隻に集中砲火となるので混戦は避けられない。
またドズル中将も少なすぎる艦隊のためにおとりと見切ってはいたもののミノフスキー粒子の濃さから敵の動きが全くわからず、連邦軍も突撃艇パブリクのミサイルでビーム撹乱膜を散布することで、ソロモンの主砲であるビームを無効にされ形成不利になっていくので、
アムロ以下、ガンダムヤガンキャノン、Gファイターも興奮を隠せない勢いから、
第三艦隊のジムやボールも慣れないながらもこれに続き突破していくことになる。
結果からすればスペースコロニーであるサイド1の残骸にティアンム艦隊が隠れており、
「なに?馬鹿な、サイド1の残骸に隠れていたのがわかりました?」
とラコック副官の怒号からドズル中将の指示により隕石に似せた衛星ミサイルを発射しながら戦艦を向かわせるように冷静に対処するのですが、ドズル中将がソロモンを放置してビグ・ザムに乗り込むのも、この後照射されるソーラシステムが決め手となった様子。
ソーラ・システムとは多数の小型ミラーパネルをつなぎあわせ、太陽光を集めてそのエネルギーを兵器として利用出来るので、今回でも第6ゲートに照射後、サイド1の残骸に隠れていたティアンム艦隊のジムとボールの大規模な軍団で進入を許すことになる。
これによりドズル中将はソロモンの放棄と同時に残った兵力と共にビグ・ザムに乗り込んで決死の突撃を次回にするのですが、これもまた司令官として戦意高揚のためと同時に兵達を逃がすための苦肉の策であることから、負け戦であることは明白である。
今回はここまでで終わっているのでその先は次回でのお話となるのですが、ここまでの戦いでホワイトベースや第三艦隊がおとりとわかっていたのにティアンム艦隊の動きが読めなかったことや、ソーラ・システムの存在に気づかなかった点ですでに敗北は決まっていた。
そんな感じがするのですが、現実には次回での展開で思っても見なかった展開から大苦戦となってしまったので、ジオン軍がどういった展開になるのか?を紹介する次回予告がこれまで以上に不気味に見えたのは筆者だけでしょうか?