機動戦士ガンダム第32話強行突破作戦から感じる過去と未来の対比

機動戦士ガンダム第32話「強行突破作戦」は前回からの連戦といういつものパターンだけに留まらず、「過去と未来の対比」という描写をそれぞれのシーンで比較されるように形成されているところが、ホワイトベース隊の成長として見られる点が面白い。


そのためビグロやグラブロに先駆け開発されたモビルアーマーザクレロの抹消された部分シャアの副官だったドレンが引き継いでキャメルパトロール艦隊で迎撃するなど、さまざまな見どころが多いのですが、過去と同じような対決でありながらもその戦いっぷりは、

素人時代とは違う正式軍人としての対応が前回加入したスレッガー中尉を含め見どころとなっているため今回もこういった点を中心に大人の目線で紐解いていくことにしましょう。

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目次

・封印された黒歴史?ガンダムVSザクレロが劇場版で抹消された理由。
・ブライトの成長?指揮官として熟練されたホワイトベース戦闘要員計画。
・ドレン迎撃!キャメルパトロール艦隊とホワイトベースの結末とは?

封印された黒歴史?ガンダムVSザクレロが劇場版で抹消された理由

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前回の第31話の冒頭で試作段階で放置されたモビルアーマーとビグロに搭乗して戦死したトクワン大尉の敵討ちをしようとシャア大佐に志願したデミトリー曹長の前フリがあったことから、冒頭に1機の未確認機体が単独出現したことでハヤトのガンタンクが対応。


それに対しアムロがガンタンクしか出撃させないことで通信士のフラウ・ボゥも、

「カイさんはまだシャワールームだっていうし」


ということから中の人関連の裏事情でハヤトとアムロで対応することになるのですが、


劇場版ではこのことを黒歴史のように抹消しており、ガンダムVSザクレロは
無かったかのように消し去られているので、ファンとしても不思議で仕方が無い。


未確認機体の正体は無断で出撃したデミトリー曹長搭乗のザクレロなのですが、

マリガン
「お言葉ではありますが、シャア大佐はトクワン少尉の仇討ちを
 止められました。それに、デミトリーは以前からモビルアーマー
 ザクレロのテストパイロットをやっておりましたので」

シャア
「聞いてはおらん、そんなモビルアーマーは」

マリガン
「実用テスト前に放棄された奴です。しかし
 デミトリーは、ザクレロの拡散ビーム砲は」


と副官のマリガン少尉のセリフにあるようにデミトリー曹長はトクワン大尉を上官として慕っており、そのことを汲まないシャアが20歳という若さも災いしてか?嫌悪感から自分の愛機であったザクレロで無断出撃をしてしまうことになる。


シャアとしては以前の仲間だったドレンとの挟み撃ちを考えていたことから、効率や成果を考えての配慮であるのですが、人というのは割り切った考えで動けるものでもないので、こういった点が指揮官としての難しさとして痛感させられている。


ザクレロが黒歴史として抹消されたのも富野由悠季がスポンサーと喧嘩したのが原因で、

「モデル化するならやってみろ」


と半ばキレ気味で作成した経緯やシャアが第31話でトクワン大尉から廃棄される予定だったモビルアーマーであることを聞いているのにザクレロのことを聞いていない口ぶりや撃破されても惜しむ素振りも見せないことからイメージとして削除された可能性が高い。


ザクレロが廃棄になった理由はアムロが撃破したときに言った、

「こちらのコンピューターで簡単に動きが読めた。
 いったいどういうつもりで?」


とあるように実戦では使い物にならないことが原因なのですがそれ以外にも命中率は拡散することで高い反面、射程が短い拡散メガ粒子砲の使い勝手が悪いことやモビルアーマーなのに接近戦主体としてすれ違い様に切り付けるヒートナタが主力武器であることを含め、


いろんな意味で迷走していることから試作段階で放棄されたのは仕方が無いということ。


コアなファンの意見では対ビームコーティングの作用でガンダムのビームライフルを無効化出来たりオプションの付け替えによっては使い勝手が良くなると言われているのですが、


富野氏としてもGアーマーの派生も嫌っていたことやハヤトのガンタンク発進シーンが前回の使いまわし描写、アムロがGアーマーのBパーツを付けてガンダムMA(モビルアーマー)モードとして高速移動対応を試みた地点など、いろんな面から分析しても、


ガンダムVSザクレロは黒歴史として抹消することは決定事項だったのかもしれません。

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ブライトの成長?指揮官として熟練されたホワイトベース戦闘要員計画

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機動戦士ガンダムの世界をガンダムVSジオン軍兵器と見ている視聴者ほど現場の事情というのはわかりづらいのでつい軽視してしまうのですが、今回の話ではブライトがアムロを中心とした過去の失敗から戦闘員の消耗と休息という点をしっかりと把握しているので、


指揮官としてのブライトの成長が大きく目立ち彼の配慮がしっかりと描写されている。


視聴者からすれば1話1話手に汗握る戦いなのであまり気にしないかもしれませんが戦争ということで相手の都合など一切考えないため、連続戦闘で相手を追い詰めるのは当たり前であり人員や補給物資が限られているホワイトベースほど、これからの厳しい戦いほど、


指揮官がしっかりと管理しないと勝てる戦いも疲弊で勝てないことに繋がってしまう。


そのため冒頭にレーダーで感知した未確認機体に関しても、

「体の調子の一番いい者でいい」


と通信士のフラウ・ボゥに指示したのも、戦闘員の体調管理を重視した結果であり、

「セイラ、少し横になったらどうだ?重力ブロックの部屋を使え
 スレッガー中尉も加わっている、少し休め。命令だ」


と前回から兄キャスバルがジオンの士官であるシャアとして自分達を攻めてくる行為に対し
心理的に悩んでいる部分を体調の悪化と感じていることから、ブライトも指揮官としてしっかりと成長している様子が細かい描写として配慮の形として表れている。


こういった部分は新しく配属されたスレッガー中尉とザクレロとの対決で帰ってきたアムロとの会話にもしっかりと描写されており、アムロに対し気遣いしているスレッガーの大人の対応か?と思いきや、セイラに対していい格好をしたいだけという人間臭い描写。


シャア側もマリガンがシャアに対し謝罪するシーンやドレンとの会話などから戦争は
人間同士が行っていると再確認させられる部分から波乱の前の休息にも思えてくる。


またセイラがシャアのことを気にしているシーンでアムロに相談する部分でも、

「私ね、どうしたら早くいいパイロットになれるかしら?」


と体調不良だと思われている部分がそういった悩みとして打ち明けられるのですが、

「セイラさんは今でもいいパイロットですよ」


とアムロも茶化すことから兄がシャアとして横暴なことをしていることを止めたいため、

「お世辞はやめてよ、アムロ。私はどうしても生き延びたいんだから」


と急に真剣になって怒るのですが、アムロはセイラがシャアを軽視していると感じ、

「無理です。そりゃザクタイプの時には僕でも戦えました。でも今は」


と冷静に対処しようとするのですが、実際にはガンダムをうまく操るアムロのようにシャアを止めたいという悩みから来ているので、こういった細かい部分を読み解いていくほど、後々の心理として、戦場への前フリとなっていることに気づかされる。


こんな感じでお互いに深い悩みを抱えながら理不尽ながらも戦わないといけないことから、
今回も波乱の予感を含みながら「強行突破作戦」を遂行することになるのです。

ドレン迎撃!キャメルパトロール艦隊とホワイトベースの結末とは?

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機動戦士ガンダム第32話ではシャアの追撃による連戦であり前半戦のザクレロ戦、後半のシャアのザンジバルとドレン大尉のキャメル艦隊との挟み撃ちの決戦の間にそれぞれの人間描写を挟むことにより、置かれている悩みや人間関係などをさりげなく描いている。


そのためブライトの後半のセリフにあるように、

「うしろにザンジバル、前にムサイか。強行突破しかないな」


と強敵であるシャアを相手にするよりも前のムサイ級宇宙巡洋艦の旗艦キャメル、スワメル、トクメルの3隻と相手をして逃げ切ったほうが勝算があることを前回の戦いからも学んでいるため、タイトル通り「強行突破作戦」となっていることは言うまでもない。


またシャアとドレンのやりとりからも、

シャア
「木馬を追っている。ちょうどお前の艦隊の
 位置なら木馬の頭を押さえられる」
ドレン
「ご縁がありますな、木馬とは。わかりました。追いつけますか?」
シャア
「ドレン、私を誰だと思っているのだ?」

と思わずニンマリしてしまう会話のやりとりからドレン大尉も戦意高揚させては、

「いいか、シャア大佐と同じ戦法をとる。リック・ドム
 六機とキャメル、トクメルは木馬に攻撃を掛けるぞ

 因縁浅からぬ木馬とガンダムか」


と何かしら意味深な部分から過去への決別を思わせるような演出が印象的ですが、実際にはホワイトベースクルーは手馴れており、カイはガンキャノン、ハヤトはガンタンク、Gファイターのセイラに加え、2号機としてGファイターにスレッガー中尉を加えるため、


戦力を見誤るほどドレンのほうが過去の決別対象となり激戦の予感から緊迫してしまう。


それと同時にシャアもホワイトベースがムサイ突破を決めたことを知ったからか?
さらに加速して追い込みをかけるのですが、戦いに夢中になっていたせいもあってか?

「その頃、南米のジャブローを発したティアンム提督
 指揮する地球連邦第二連合艦隊の一群が大気圏を突破、

 ルナ2に向けての進路を取りつつあった」


というサラミス艦が宇宙へ飛び立つシーンを見ると戦いからまだ2時間しか経過していないことを物語るので、ここまでの展開がどれだけ速いか?身を持って知らされる。


そんなことを知ってか知らずか?スレッガーが功を焦りいきなりビーム砲で先制するので、

「スレッガーさんかい?早い、早いよ」


とカイもスレッガーに惹かれるように敵にあわせ陣形を取りガンダンクから離れるので、

「カイ、それにスレッガー中尉までガンタンクから離れるなんて。
 敵と同じように分かれては勝ち目はなくなるわ」


1人だけ冷静に判断していたセイラは全滅を察知したのか?

セイラ
「ハヤト、聞こえて?カイ達と共同であたらなければ無理よ。
 あの二人、自分達だけで勝てると思っているわ」
ハヤト
「了解です。僕とセイラさんで
 カイ、スレッガー機のうしろにつきましょう」


とカイとスレッガーの暴走を何とか食い止めようと陣形を立て攻め寄ってくるリック・ドム3機に対しカイがひきつけて倒したものの残りの2機の進入を許しスレッガーが被弾。


後ろにいたハヤトが撃たれそうになったときにセイラが2機同時に当て1機は爆破、残り1機はハヤトの背面に入ってしまったことから1発食らうものの、セイラがちゃっかりフォローして何とか事なきを得ることから、最初からヒヤヒヤもので見ていられない。


そういった隙をドレンが見逃すわけもなくムサイ艦隊による追撃でホワイトベース隊は
ピンチとなるのですが、残り3機のリック・ドムにホワイトベースが囲まれることから、

ブライト
「頼む。スカート付きを叩かん限り
 ムサイに攻撃もできない。急いでくれ」

オスカ
「第6ブロック被弾、四発目です」

ブライト
「弾幕が薄いぞ。相手は動いてくれるんだ、なまじ狙わずに撃てと言え」


と冷静に判断しながらセイラ達全員を防衛に回し何とか突破口を開こうとする。


そういったきわどい攻撃が横行するためか状況は3対1の艦隊戦となるので操舵手の
ミライも必死となって回避してはブライトも冷静な判断から的確な指示を出しながら、

「主砲、メガ粒子砲はムサイのブリッジ、あるいはエンジンを狙え。撃て」


と少ない戦力でも倒せる方法でしっかりと対処しているのに肝心のクルーは、

マーカー
「直撃、左翼のムサイです」
ブライト
「誰が砲塔を狙えと言ったか?機関を破壊すれば
 ビーム砲は使えなくなる、砲撃は集中して行え」


と的外れとなっても冷静に修正するのでブライトも成長していることを示している。


結局、先行させてホワイトベース側のモビルスーツを倒そうとした6機のリック・ドムが乱戦になってしまった結果、ホワイトベースの影となって邪魔になってしまったことから、

「ああっ、ト、トクメルが。リック・ドム二機、
 後退させろ、こちらからの砲撃の邪魔だ」


左側のトクメル艦が倒され3対1で有利だったはずが2対1と互角なってしまう。


さらにザクレロとの戦いで修理が終わったアムロのガンダムにより、

「スワメルか、スワメル、よけるんだ
 うっ、ガンダムだ。あの白い奴だ。うっ」


まるで弱点を突くように上からのビームライフル襲撃で右側で応戦していたスワメルのムサイを倒し、ビームサーベルでドレンがいる機関をぶった切るという対応の早さ。


これもまたブライトがガンダム発進前に指示した、

「各砲撃手へ、狙いは左のムサイだけだ、右は忘れろ」


ということでドレンのキャメルのみに集中させスワメルをアムロにやらせた結果なのですが、ここでもドレンが焦っている間に未確認物体として描写させることで遅れてきたヒーローという位置づけでガンダムによる逆転劇を生んでいることからスワメルを破壊。


冷静に1隻ずつ対応することで圧倒的不利だった戦線をひっくり返すことから、

「あのドレンが私の到着まで持ちこたえられんとはな」


というシャアの言葉がホワイトベース隊の成長を演出しドレンの死が重く圧し掛かる。


勝因を考えるとセイラの冷静な判断からホワイトベースの防衛に徹したこと。ブライトがこれまでの経験からムサイを1隻ずつ、集中して少ない砲撃で倒していったこと。そしてガンダムの戦力を考慮したキャメル艦隊の引きつけが主な部分なのですが、


今回の戦いでもシャアの2手3手先を読む戦術にハメられており、

「ここからルナ2へ進路を取れば98パーセントの
 確率でザンジバルと接触します」


ということから逆方向のサイド6へ向かうことになってしまうのでそこでも
また一波乱起きそうな予感からホワイトベースの戦いはまだまだ続くのです。

レクタングル(大)
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