機動戦士ガンダム迫撃!トリプル・ドムから読み取る切迫した人間描写

機動戦士ガンダム第24話「迫撃!トリプル・ドム」ではその名の通り、ジオン軍の黒い三連星が重モビルスーツ「ドム」に乗ってホワイトベースを襲うことから、この攻防のみに注目されやすいのですが、現実にはオデッサ作戦に対して上層部の見えない先読み戦。


ホワイトベースでの明確化された人員変更など、さまざまな細かい部分が描写されているので、意外と忙しい話であることを知っておかないと裏の裏まで読み取りづらい。


特に今回は黒い三連星とマチルダを通して地球連邦軍とジオン軍の内情が読み取れる
ことから、今回も大人の目線で1つ1つ紐解いていくことにしましょう。

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目次

・激昂するレビル将軍とキシリア少将黒い三連星を通して読み合う手とは。
・マチルダ中尉はあこがれの人?アムロを通して感じ取る人間性とは?
・セイラがGアーマーのパイロット?明確化されたV作戦のポジション。
・黒い三連星のジェットストリームアタック!奴らの底知れぬ実力とは。

激昂するレビル将軍とキシリア少将黒い三連星を通して読み合う手とは

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当時は視聴者が平均年齢12歳の子供であったことからガンダムと新しく手に入ったGアーマーを含めたV作戦とジオンの三連星こと黒い三連星のドム3機との戦いにしか注目していなかったのですが、現実には地球連邦軍とジオン軍との上層部の裏の読み合いなど、

かなりコアな部分をついていることから、レビル将軍とキシリア少将のセリフなどを
見るほど、どちらもかなり切迫した状態になっていることに気づかされる。


こう言えるのも冒頭からジオン軍側はキシリア少将が部下である将校達に鼓舞するように、マ・クベがオデッサ鉱山から資源を送ったことに対し、肝心の将校達は地球連邦軍の高官同様保身しか考えないので、オデッサに対し有力な戦力を送れていないことに激怒。

ナレーターの永井一郎さんが言うようにキシリア自身、地球に出撃するとギレンとドズル2人を無駄にけん制、足の引っ張り合いになる他、戦場で命を落とす危険性が高いことから、自分の中で一番強い戦力である黒い三連星を送るしかないという歯がゆさしかない。


また何故か左遷されたのに階級が1つ上がっているシャア中佐の現状や後方支援として出来る範囲のことをやるように指示する部分は、兄達には負けたくない!という意思の現れであり「各部隊に配属中の重モビルスーツ」という意味深ものを各部隊に回すことなど、


先の先を読んで対応する部分からオデッサよりもジャブロのことを考えていたのでは?


キシリアの言動からはそう感じて仕方がないのですが、これもまた「地球での白兵戦用のモビルスーツ」や「マッドアングラー隊」という単語を不意に振りながらも、シャアがこの後出てくるのか?と思わせる演出がコアなファンほど裏を読ませることになる。


それと同時にレビル将軍も大型陸戦艇ビックトレーの中で宇宙からのキシリアの動きに
敏感となっており、空軍パトロールからの報告からも警戒していることから、

「ジオンの戦艦ザンジバルが降りてきたと?」


と怪訝な感じから各隊の動きが遅れているのでエルラン中将に急がせるのですが、

「問題はそのあとだ。黒い三連星が新型モビルスーツで来た。
 ルウム戦役の時に私を捕虜にした兵士達だ。手ごわいぞ、
 これは。オデッサ・デイの開始を早めるしかないな、エルラン」


と積年の恨みとばかりエルランを見るが、大人の目線では各部隊の集結を急がせるときに「しかし」と渋ってしまったことから疑いがかけられたように感じ、部下であるジュダックが声をかけたときに放った有名セリフ、

「ジュダック、貴様、ダブルスパイではなかろうな?
 黒い三連星がザンジバルで降りてきた事、レビルには筒抜けだったぞ」


猜疑心丸出しなので、レビル将軍は内心怪しい奴と見えていたのかもしれない。


まあ実際には単純に黒い三連星に警戒していただけであり、さほど深い理由はないと思えるのですが、こういった場合スパイほど自分の立場が危ういほど自分以外信用出来なくなるので、富野描写では後々に続く意味深なサインとなっていることが大きい。


こんな感覚でお互いに動きを読みながら裏ではけん制し合っているのですが、現実にはホワイトベースのエンジンが不調であることから、現場にいるマチルダ中尉やセキ大尉の指導により、本当の「V作戦」が展開しようとしているのです。

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マチルダ中尉はあこがれの人?アムロを通して感じ取る人間性とは?

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ホワイトベースはオデッサ作戦での中核となるため、急がせるように不調であるエンジンを中心にマチルダ中尉とセキ大尉の指導で修理と補給を急がされるのですが、その間のひとときとしてアムロのあこがれの人としても描写しているのでこの点も見逃せない。


マチルダがショートカットなのはキャラクター担当の安彦良和さんがロングヘアーの女性を描くのが苦手であり、ロングヘアの南欧出身の女性という富野氏の意見と間逆になったためですが、スタッフの意見ではロングヘアの女性は人気がないことから、


口紅で大人の女性として魅了させショートにすることで戦う女性を描写しているらしい。


マチルダのホワイトベースクルーへの接し方は単に美しいというだけでなく24歳の大人としても誠実であり、凛とした態度で間違ったものには屈しないという感覚から、レビル将軍にも慕われているのですが、それ以上に時々見せるさりげない優しさや笑顔が魅力的であり、


これがアムロやカイを魅了する要因となっているものだと筆者はそう分析している。


今回の話でも幼馴染のフラウ・ボゥがエアコンを直す約束をしていたのにマチルダと一緒にいることで上の空になっているアムロに腹を立て、「んもう!」と真似をするハロを横蹴りするシーンが印象的なのですが、マチルダからすれば15歳のアムロは子供同然。


後日談でジャブローにいるウッディ大尉と結婚する予定だったのでカイが機銃の前で、

「あのマチルダさんってよう、俺好みってとこかな。
 きりっとしててやさしくてよう
 マチルダさんみたいなの恋人だったら最高だよな」


ということを偶然通路で聞かれたシーンでも冷静な判断で、

「手の方がお留守のようね、素敵な恋人探してね」


と何事も無かったような顔で移動しようとするのも、恥の書き捨てからカイの
記念写真を了承するのも誠実な大人として対応しているため今でも人気が高い。


またマチルダの性格がわかるのも放射能洗浄装置に入った際のセリフ、

アムロ
「なぜ補給部隊に入ったんですか?」
マチルダ
「そうね。戦争という破壊の中でただひとつ、
 物を作っていく事ができるから、かしらね」
アムロ 「物を作る」
マチルダ
「戦いは破壊だけでも、人間ってそれだけでは
 生きていられないと私には思えたからよ」


と戦争での殺し合いよりも人間としての未来を見ている部分が魅力を引き出している。


筆者としては戦争をする軍隊の中で物を作るということはそれだけ戦火を広げるだけで、本当は武器を放棄して同盟を結ぶことが重要だ!と思えるのですが、戦争という無情な中で生き残りながら自我を通すには、こういった考え方でしか自分を証明出来なかった。


それがマチルダの強さであり内に秘めた唯一の弱さでもあったのかもしれませんね。

セイラがGアーマーのパイロット?明確化されたV作戦のポジション

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機動戦士ガンダム第24話では上層部の見えない先の読み合いやマチルダを中心に浮かれるアムロなどさまざまな描写が多いことから慌しいのですが、その中でもこの話からV作戦としてのポジションがほぼ決定するので、ファンであるほど見逃せない部分である。


ます最初にガンタンクの操縦系が砲撃手であったハヤトのほうになり2人乗りから完全1人乗りになったこと。これによりガンダムはアムロ、ガンキャノンはカイ、ガンタンクはハヤトとほぼ固定となり、V作戦での明確なポジションが決定してしまうのですが、


この理由も今までの激戦での人手不足と適正を判断した結果、決定となった様子。


特に驚いたのがセイラがGアーマーのパイロットになったということ。話の中でミライがガンタンクのパイロットもやったことがあるジョブ・ジョンでは駄目なのか?ということで凄い剣幕で困惑しながら、通信士がフラウ・ボゥになる都合が良すぎる流れとなる。


これもTV版と劇場版では理由が全く違っており、TV版ではセキ大尉のガンダムを一度でも使っていることからの適正、劇場版ではマチルダ中尉からの推薦でニュータイプの可能性のある人への実験とかなり意味合いが違うのですが、どちらも第17話にあった、


ガンダムを操作しているという点に共通しているのでセイラも驚きを隠せない。


この点に関して富野由悠季氏はセイラをパイロットにしたいきさつとして、

パワーアップパーツのためだけに新キャラの用意をすること
はしたくなかった。また中途半端な存在になりつつあった
フラウ・ボゥを通信士にすることでうまくまとまった。


とあるので、人員不足のどさくさで行った人員整理のように思えてくる。


結果としてはGアーマーで出撃してアムロの指示をこなせている部分や、ガンダムと分離してGファイターで戦う部分など基本システムを理解していたため、セイラを含めた明確化されたV作戦のポジションは大成功となったのです。

黒い三連星のジェットストリームアタック!奴らの底知れぬ実力とは

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レビル将軍がルウム戦役時捕虜となったエピソードを語るように、黒い三連星は底知れぬ実力があることから、ただならぬ強敵という印象を持たせながら、積年の恨みのように部下全体に警戒させるのですが、何故そこまで警戒しないといけない相手なのか?


この理由も彼らが三位一体として戦う部分が恐れられており、隊長であるガイヤが長距離戦闘を得意としながら先頭で技量や能力を分析し瞬時に作戦を立て、マッシュが中距離戦闘を得意としながら2人を砲撃で援護、オルテガが白兵戦や近接戦闘を得意としながら、

コンビネーション攻撃のとどめを行う「ジェットストリームアタック」という戦術を最大の攻撃手段としていたことから、ルウム戦役でも14隻とシャアの3倍近くを落としていた部分があるため、レビル将軍が警戒するのも仕方の無いことである。


また黒い三連星の由来も彼らの高いコンビネーション能力から独自の指揮系統に行動が許されていたことや、たたき上げで士官となっていることから、存在意義としてパーソナルカラーであるダークシーブルーに塗られることを許されていたことから言われている。


この話でもマ・クベとガイアの会話にあるように、

「アッハハハハ、まあ任せろ。シャアと我々とは訳が違うて。
 早速木馬と白いモビルスーツとやらを見せてもらおうか」

と生意気な態度を取るのもシャアのような士官学校出身のエリートを忌み嫌いながら実力で上がって来た自信があるからに過ぎず、マッシュは隻眼(片目)であるため当時の放送コードにひっかかることからほとんどセリフはなく、シャアに対して嫌味が多かった。


オルテガも同様に叩き上げのためか?ルウム戦役でたった5隻しか倒していないシャアがマスコミにチヤホヤされていることに対し、激怒するシーンを「THE ORIGIN」で描かれていることから、実戦派である彼らが来たことはキシリアも相当焦っていたのだろう。


また彼らが登場しているドムはザクやグフの弱点であった耐久性を高めると同時に足の裏にホバー走行機能を搭載することで、武器を持った総重量が81トンの重さを高速で動けるという物理に反した行動が可能であったことからこの動きに大苦戦!

ガンタンクは足場を狙われたり、Gアーマーは直撃を食らう。その間に動けないホワイトベースが集中砲火となってしまうので、今考えるとよく撤退させたなあ~と関心するくらい戦術に長けておりガンダムでも大苦戦したのでレビル将軍が警戒するのもうなづける。


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そのためか?奴らには勝てない!と察知したマチルダの行動は正しかったのか?ガイアを先頭に一直線で突っ込んで仕掛ける「ジェットストリームアタック」の2回目で何とかマッシュのドムをビームサーベルで倒し残り2機を撤退にまで追い込んだのですが、

現実にはオルテガのドムにマチルダがミデアで突っ込まなければアムロはヒート・サーベルでやられていた可能性が高かったように思えて仕方が無い。


またマチルダの戦死を予兆のように見るミライの描写や、ジェットストリームアタック時に3番目のオルテガの攻撃をかわすときのアムロの目など、何かしらニュータイプを思わせる描写があるのですが、この地点ではニュータイプの定義が確定していないことから、

ホワイトベースからマチルダの死に対し敬礼して見送るアムロ達の描写が、あこがれだった分だけ無情さを生み戦いの非常さ、己の未熟さが余計に重く見えるのは、戦争は悲しみを生むだけしか無いことを描写しているからかもしれません。


今回のように死を持ってしめそうとした行為ほど残されたものには重くのしかかるだけですが、この点を考えるほど、マチルダが言った「戦いは破壊だけでは生きられない」という言葉が重くのしかかるのは筆者だけでしょうか?

レクタングル(大)
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