機動戦士ガンダム第18話で感じる複雑な人間関係と暗躍する巨大な影

機動戦士ガンダム第18話「灼熱のアッザム・リーダー」ではモビルアーマーという定義で出現するアッザムが登場するので子供の頃は「何だこの壺見たいな奴?マ・クベの趣味か?」と驚きを隠せなかったのですが、大人目線で見直してみるほどそれ以外の点では、

オデッザ付近の鉱山を支配しているマ・クベと彼の上司であるキシリア・ザビとの関係性や、アムロが脱走した後の生活観やホワイトベースクルーの感情など、複雑に入り組んでいることから、富野由悠季氏独特のリアルでコアな演出となっている。


またよく分析をすると将来に関連する部分をリアルに描写しているため、それぞれの立場に
なりきるように、今回も大人の目線で紐解いていくことにしましょう。

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目次

・キシリアとマ・クベが急接近?視察した鉱山の重要性とジオン軍裏事情。
・ガンダムVSアッザム?富野由悠季が提案したモビルアーマーの定義。
・アムロ脱走の現実!ホワイトベースの実情と現場で感じた巨大な敵の影。

キシリアとマ・クベが急接近?視察した鉱山の重要性とジオン軍裏事情

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機動戦士ガンダム第18話では冒頭のナレーションでジオン軍宇宙攻撃軍総司令キシリア・ザビ少将がジオン公国の前進基地グラナダから戦艦グワジンで地球に向かうシーンで、

キシリアは、地球連邦軍にとってもジオン軍にとっても最も重要である
資源の発掘にあたっているマ・クベの下を訪れようとしていた。


とあるように今後の戦争を左右する資源の視察に部下であるマ・クベ大佐の元へ現れるのですが、子供の頃はカメラ目線で変な紫色のマスクをつけているので「この変な格好したおばちゃんが?」という印象しかなかったことを今でも覚えている。


そのためアニメ版では顔があまりにも老けすぎ、言動もマ・クベ同様狡猾なためか?マチルダと同じ24歳という設定はおかしいという意見からか、THE ORIGINでは3年後の主人公コウ・ウラキの敵になるシーマと同じ35歳に設定されているらしい。


ちなみにマスクをつけているのも宇宙線などによる肌荒れを防ぐためとか戦場の血の臭いを
嫌悪したとか、女を捨て野心のために戦っているからといわれているが詳細は不明。


またガンダムが今回の話に出てくる第102鉱山基地を強襲した際に、

「これまでのようですね。機密保持の為、基地を爆破しなさい
 なによりも国家機密が優先します」


というセリフからギレン同様、冷酷な人間性を感じさせるのですが、ガルマの葬儀を認めない父デギンに気を使う様子や、デギンが死んだときに見せた怒りは多少人間性を持っているので、目的に対する非情さを演じているに過ぎないのだと思える。


キシリアがマ・クベに任せている鉱山に視察に来たのはマ・クベとの基地での会話通り、

「ソリウムには限りません。連邦には貴重な資源を1グラム
 たりとも渡してはならないのです。それがこの戦いを勝利に
 導き、ひいてはその後の支配の確立にもつながるわけだ」


とマ・クベに釘を刺すように質のよいソリウム鉱床関係なく資源に対しては人員と機材を惜しまずに全て掘り起こすように指示するので物資補給の功績を焦っていた感覚が強い。


ここで出てくるソリウムという鉱石は富野由悠季氏の想像物質であり、実際にはトリウムを元にした原子炉の何十倍もあるエネルギーを作りながら放射能性がほとんど出ない物質として重宝されたためにモビルスーツなどの兵器に利用されていたことが考えられる。


この理由も富野氏の意見から、

「ガンダムにトリウム原子炉を想定していた」

と公言しているので、資源に疎いキシリアでも何となく重要であることは明白である。


またキシリアがわざわざグラナダから地球の鉱山視察に来たのも、長男であるギレンにはガルマ国葬による戦意高揚で政治的に負けており、三男であるドズルには軍事的な実直さや部下への信頼度に勝てる見込みも無いため、マ・クベからオデッサデーのことも聞き、


この2人に対抗する切り札として視察しに来た可能性が最も高いように思えてくる。


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この点は筆者の想像なので確実とは言えませんが、ザビ家でのキシリアの役割を見ていくほど、長男ギレンには天才と年季の差から政治的手腕では勝てず、三男ドズルとは何度も対立するも、ギレンが自分が管理出来ない部分まで悪化することを嫌ったことから調停。

ドズルは宇宙攻撃軍。キシリアは隠密行動や資源管理など突撃機動軍としてそれぞれに
役割を与えたことにより、三国志のように三権が威嚇するような形となっている。


このように三者が決め手が無いことから、今後の政権拡大のために資源の視察やモビルアーマー「アッザム」のテスト導入が進められているのですが、偶然にもアムロがガンダムを持って脱走をしまい、ガンダムVSアッザム&鉱山破壊ということになるため、


キシリアとマ・クベはドムを配下のジオンの三連星こと「黒い三連星」に与えたり、新型兵器など考えていた作戦を全面的に修正せざるを得なくなってしまうのです。

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ガンダムVSアッザム?富野由悠季が提案したモビルアーマーの定義

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機動戦士ガンダム第18話はタイトルが「灼熱のアッザム・リーダー」と付いているようにガンダムVSアッザムの戦いがメインであり、アムロがどう対応するのか?子供の頃はこの点しか覚えが無かったのですが、アッザムがモビルスーツでなくモビルアーマー。


この定義が後々の話に反映しているので、ファンほどこの点を読み解かないといけない。


アッザムが作られたのも裏事情では視聴率低迷のための布石であり、第17話から第20話までタイトル前にガンダムの空中換装シーンの訓練が放送されていたのと同じくおもちゃ性として売り出したかったに過ぎないのですが、それ以上に第28話に出撃するグラブロが、

モビルアーマーであることを位置づけ、唐突に出てくるシーンでありながらも
どっかで似たようなものを見たような」という感覚を植えつけるためである。


モビルアーマーとは拠点防衛や敵地強襲など特定な目的を持っており、その大半が要塞を思わせ、大出力を中心とした大型機動兵器と定義されているのですが、アッザムはその先駆けでミノフスキークラフトで浮くように空が飛べることから移動要塞と称されている。


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またアッザムは移動式対地攻撃兵器G87ルナタンクを元に戦闘用に開発されており、エネルギーを溜めて撃つ連装メガ粒子砲を上下で8つ。モビルスーツ捕獲用に電磁波を与え、最大4000℃まで上げ電子回路を破壊するアッザム・リーダーを備えていたのですが、

ガンダムとの戦闘では主力である連装メガ粒子砲はガンダムシールドで防げるほど威力は低く、ビーム・ジャベリンでいくつか破壊され、アッザムリーダーに関してもガンダムの回路を破壊するまでには至らず、放熱磁場が弱った瞬間に破壊されてしまう。


アッザムが開発された理由は劇場版での出撃がカットされているため不明なのですが、キシリアの置かれた立場を考えると、ガンダム、ガンキャノン、ガンタンクの捕獲や拠点防衛のための武装強化の2点が妥当な点だと思えてくる。


キシリアはこの点を強く見ていたせいか、

「連邦軍のモビルスーツ、噂以上の性能と見た。我らも
 テスト中の各モビルスーツの実戦配備を急がねばならない」

とあり中盤以降キシリア管轄を含めたいろんな戦場で新兵器が出現していることから、
視聴者が混乱しないようにしっかりとした布石を打っているものだと感じて他ならない。


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ちなみにアッザム・リーダーの超高温熱源体アイデアは金属の粉のようなものをガンダムにかけて熱を放出していることから、電子レンジ内に金属片を入れたことをアイデアだと思いますが、同じ原理のミノフスキー粒子がある中、相殺されないのが不思議な部分。


またガンダムが高温になり警告をする声として学習コンピュータからの、

「パイロット及び回路保護の為、全エネルギーの98パーセントを放出中」


という部分から当時では最先端である部分を盛り込んでいる富野由悠季氏の思考が
これらからでも読み取れるのでは無いでしょうか?

アムロ脱走の現実!ホワイトベースの実情と現場で感じた巨大な敵の影

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機動戦士ガンダム第18話ではキシリアの野望など知らずに、必要とされない葛藤を持ちながらガンダムを持って脱走したアムロの実情や、アムロを問題視するホワイトベースの心情などがそれぞれのキャラクター性を生かして丁寧に描かれている。


そのため冒頭から逃亡しているアムロの様子を描き、非常食用の缶詰を食べながら物音がすると拳銃で威嚇するシーンや、夜間飛行テストしているアッザムに警戒する部分を現状として描き、その後にホワイトベースの内情を描くことで心情の落差を演出している。


ここでも自分の近くにいるものは全て敵!という感覚で鋭くなっているアムロに対し、カイはふざけた態度で「脱走者は死刑!」と茶化し、ブライトやセイラは冷静に判断するのでフラウ・ボゥは逆上してしまいミライやリュウが諭すように落ち着かせることになる。


こんな感覚なのでフラウ・ボゥが心配している間にさっさと帰ればいいのですが、肝心のアムロはフラウ・ボゥに再開しても銃を向け唖然とするので流石にびっくりしてしまう。


またその後に発したアムロのセリフで、

「みんなが心配してるのはこいつだろ?」


とガンダムの前で猜疑心丸出しの目線からフラウ・ボゥを見つめその後に言った、

「違うわよ。今帰れば許してくれるって
 だって、カイさんは敵前逃亡罪は死刑だって・・・」


というセリフからホワイトベースクルーの本音と察してしまい逆上してしまう。


フラウ・ボゥとしてはアムロが本当に心配であり大事にならないように、

「ち、違うわ。ホワイトベースのみんなはアムロの力を必要としているのよ」


と何とか取り繕うとするのですが、そんなのはうそに決まっていると思っている
アムロはガンダムに乗って逃げようとするので、フラウ・ボゥはつい感情的になり、

「また逃げる気?本当はみんなに自分を認めてもらうだけの
 自信がないんでしょ?だから帰れないのね」


と売り言葉に買い言葉でアムロが帰りづらい状況を作ったからか、

「僕の気持ちがわかるもんか」


と火に油を注ぐような感覚で余計にこじれてしまう。


ここまでの気持ちを汲むのであれば、アムロが今まで頑張って来た成果を認めながら、彼に足りないものを注意して指導すべきなのですが、アムロからすれば自分は悪くないと思っている部分が強いため、この点を汲めなかったフラウ・ボゥの意見が理解出来ない。

こういった勝手な性格が災いしているのか?カイやモブキャラA、Bにも脱走した奴扱いでガンダムを手見上げにジオンに寝返るなど勝手な想像をされてしまうので、不穏な空気しか見えないのですが、アムロは見つけた鉱山の大きさから勘違いしてしまい、

「これだな、レビル将軍がオデッサ・デイで叩こうというジオン軍の
 鉱山って、ザクは一機も置いてないようだな。これならできる

 ガンダムでここを潰せば連邦軍の軍隊が動かなくってすむ。
 もうブライトさんにもミライさんにも口を出させるもんか」


と先走り奇襲するのでこの思い込みが後々の人間関係の悪化にまでつながってしまう。


結果としては無駄な消耗戦であり、破壊した基地を探索しているときに偶然拾った紙に、

「第102採掘基地。第102採掘基地だって?僕がやったのはたくさんある
 採掘基地のひとつだったっていうことなのか。レビル将軍が叩こうと
 してるのはこんな鉱山じゃないのか?もっとすごい鉱山の事なのか」


と100以上ある鉱山のひとつに過ぎず敵がいかに巨大であるか?思い知ることになる。


この点は富野方式らしく世の中思ったようにはいかない!ということを知らしめており
現実味あふれるものなのですが、それを強調するように倒れていたジオン兵からも、

「もし、お前さんがあのモビルスーツのパイロットなら、信じられんがね、
 パイロットなら敵に甘すぎると命がいくらあっても足らんぜ」


と止血した後に言われたことがアムロの見積もりの甘さを示しているように感じてくる。


実際にブライトやミライ、リュウが破壊された鉱山に到着したときでも、

「うん、困った事をしてくれたな。ガンダムのおかげで敵は
 我々に対して完全にガードを固めちまったと判断していい」


とよかれと思って成果をあげるつもりが逆効果として悪化になったことから、セイラにも英雄気取りと罵られ、姿が見えないことでカイにも逃げたと好き放題に言われまくる。


このようなことを1つ取ってもキャラクターの性格や現在の立場をしっかりと描いていることから視聴者ほどお互いにもっと話し合いをするべきでは?と感じるのですが、さまざまな性格と人間関係でエゴイズム(利己主義)で構成するのが富野方式であるため、


この点の葛藤が今後のアムロの成長として描いている証拠かもしれませんね。

レクタングル(大)
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