機動戦士ガンダム ガルマ散るで戦死させたシャアの巧妙な罠と裏切り

機動戦士ガンダム第10話「ガルマ散る」は前半のクライマックスとして、ザビ家末弟の
ガルマがシャアの裏切りに会い、ガウ攻撃空母で特攻して死んでいくシーンが印象的ですが、

それ以外にも戦争での政治的背景やそれぞれが背負っている心境を描写しており、この点を
丁寧に演出していることから、見逃せない名シーンが盛りだくさんである。


特にシャアのガルマに対する裏切りまでの構図から、ガルマの名誉と威厳とかけた
未来への戦いを中心に、巻き込むように繰り広げられるホワイトベースとの戦いは、

ガンダムファンの中でも、熱く語られる一話となっていることから、今回は
この点を中心に大人の視点で分析していきたいと思います。

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目次

・ガルマ散るのセリフから見る戦争下での政治的背景とエリート階級社会。
・ガルマ・ザビとイセリナ・エッシェンバッハ純粋な恋の裏にあるものは。
・シャアの裏切り!巧妙に仕組まれたガルマ仇討ちまでのカウントダウン。

ガルマ散るのセリフから見る戦争下での政治的背景とエリート階級社会

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機動戦士ガンダムでは戦争でのリアルを丁寧に表現しているため、補給や組織の関係それぞれの立場における人間模様を複雑に描写していることから、コアでマニアなファンが根強くいるのですが、今回の第10話「ガルマ散る」でも、ホワイトベースとの戦線で、

戦火に入った北米ニューヤークに住む、金持ちエリート階級を招いてのパーティを開き、
防衛の代わりに、軍資設備への援助を求めるという裏事情を、戦時下の実情として
見事なまでに描いている。


そのためかジオン軍のデギン・ソド・ザビに何とか取り入ろうとするものの大半は鼻持ち
ならぬ金持ちばかりであり、これらがエリートとしてガルマに取り入ろうとするため、

「時に、お父上のデギン公王には地球においでになるご予定は?」
「おいでの節は是非なにとぞよしなに、ヒヒヒヒ」


インギン無礼な笑顔と共に、何とか取り入ろうとするので、純粋なガルマは、

「連中はむしが好かん」


とシャアに激怒しながら、酒を飲み干すシーンが印象的なのですが、現実には戦争というのは莫大なお金が物資が必要となってくるので、金持ち育ちほど政治的視野を持たないことには、勝てる戦争も勝てなくなってしまう。


またガルマはこれまでの戦いを見るほど、ジオン公国の士官学校を首席で卒業した分
無駄にプライドが高く、お坊ちゃん育ちが抜け切れていない。


そのことをシャアも心の中で指摘しているように、実践でも臨機応変な部分で詰めが
甘く、奇策ばかりのホワイトベースの面々にことごとく連敗
をしていることから、

何とかして挽回させなければ・・・という焦りがあったことはシャアの会話や
この後に出演する恋人イセリナの会話を見るほど、明らかになっている。


この点も挫折を知らないエリートほど、失敗が重なると一気に挽回させようとする悪い部分が焦りとなってしまう証拠なのですが、現実にはシャアがガルマをそのように仕向けながらも、肝心なところでアドバイスをして信頼させているので、この点が利いている分、

シャアの裏切りはガルマに取って大打撃となり、この話で盛大な散り際となるのです。

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ガルマ・ザビとイセリナ・エッシェンバッハ純粋な恋の裏にあるものは

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ガルマ・ザビはどういった人物なのか?は第6話の「ガルマ出撃す」から彼の行動で大体把握出来たと思いますが、私生活はいったいどうなっているのか?この点がファンの間で気になっていたのか?それともスタッフの最期のたむけか?

イセリナという恋人を登場させることで、彼が立たされている立場を描いている。


ガルマはこの後の話でも描かれているように、父であるデギン・ソド・ザビに劇愛され、美男子であることも加わってか?兄ドズルやジオン公国では次期公王に期待されているほど人気が高かったのですが、これもまた恵まれた環境で育ったためにまっすぐである。

またジオン公国の士官学校を首席で卒業したことによるプライドの高さや、見た目以上に純粋であることから、「疑う」ということや「卑怯な戦術」ということを知らなすぎるために、父からも軍人になるのは向いていない!と心配していた様子。


つまり「人を信じすぎる純粋さ」と「お坊ちゃんとしての精神的な甘さ」をシャアが
しっかりと見抜いていたため、今回の惨劇を見事に描けたというわけです。


そのためガルマが指揮官になったときでも表向きはジオン公国軍の地球方面軍司令官。


連邦軍の本拠地がある南米ジャブローにけん制する形で、北米のキャリフォルニア区を中心とした部分を制圧させ、ここにあった豊富な食料資源や工業力を抑えることで、敵味方共に権威を示させ、英雄としてガルマの甘い面を見せないように配慮したのですが、

実際にはジオン地上軍第2軍(北米軍)司令官程度の権威でしかなく、姉のキシリア率いる突撃機動軍にフォローされているだけのものでしかないので、最前線というよりも、ちょっと下がって様子を見る副官程度の感覚でしかない。


これもまた父デギンの「若くして死なせたくない」という配慮が全てを物語り、それに答えるように、もともと純粋な性格のために、現地の人々と友好関係を築くことに対し長けていたので、外交官としてなら優秀であった様子。


ジオン軍の支配下になったニューヤークで市長はガルマとザビ家を嫌っていますが、その娘イセリナ・エッシェンバッハはガルマの純粋さに恋に落ち、彼女に対しホワイトベースとガンダムを倒すことで純粋に愛を貫こうとする姿は、シャアが横目でからかうように、

「前線でラブロマンスか。ガルマらしいよ、お坊ちゃん」


とロミオとジュリエットを思わせるような情熱でガルマの純粋さを描写することから、同じように散ってしまうのは、ザビ家ということを差し引いても悲劇なのかもしれません。

シャアの裏切り!巧妙に仕組まれたガルマ仇討ちまでのカウントダウン

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機動戦士ガンダムの前半のクライマックスである「ガルマ散る」の最大の見どころは、シャアがザビ家であるガルマを戦死にまで持ち込むまでの巧妙な作戦なのですが、これもまた、シャアの計算された策略によって完成されるので、ファンでなくても見逃せない。


本来ならガルマはジオン地上軍第2軍の司令官、つまり北米では一番偉い司令官なので、自ら戦闘に出て行かなくとも部下に指示を出し、戦術でホワイトベースやガンダムを倒せば済む話なのですが、彼が前線で攻撃をする羽目になったのも、シャアの巧妙な作戦。


つまりシャア自身がガルマが前線に出ざるを得ない状況を作り出したに他ならない。


状況がわからない人に説明するとシャアの正体はキャスバル・レム・ダイクン。


ジオン共和国を建国したジオン・ズム・ダイクンの息子であり、彼の父はザビ家のデギンに暗殺されたと噂されていることから、ザビ家滅亡のためにジオン軍に入り「鬼子」としてザビ家の存在を恨んでいる。


またザビ家の大半が階級が上の存在であることや、戦火で暗殺をするにも監視やボディガードなどがいることから士官学校時代からの良き友人を装い、プライドの高さと自ら手柄を上げたいという欲望をうまく刺激しながら友人としてのアドバイスで誘導する。


こうすることでガルマの失態となり、これまで失敗をしたことのないエリートであるほど、プライドの高さから失態を一気に取り戻そうとするため、自らの権限を誇示するように前線へ出撃しては、後のない状態まで追い込んでいく。


こうなるとガルマは絶対に失敗出来ないために、確実な方法を選ぶことから連邦軍の
制空権内にホワイトベースが逃げようとするため、これを待ち伏せするように対応。


ガウ攻撃空母のじゅうたん爆撃でおびきよせようとするのですが、現実には陽動作戦でガンダムが囮となり、ホワイトベースはドーム上の雨天野球場にすっぽりと入りながら後ろから奇襲を仕掛けることになるので、つくづく運のない状態で死んでいくのである。


これもまたシャアの策略であり、ガウで攻撃させるガルマに対して、

「フフフ、穴に逃げ込んだネズミを燻りだすのは
 絨毯(じゅうたん)爆撃に限るな」

と煽っており、ガルマの戦意を刺激するように横でアドバイスするのですが、このことで
なかなか出てこないホワイトベースに焦りを出してしまうのもすでに計算済み。


部下としてザクで探りを入れることを言い出しながら、誘導しているので、

ガルマ 「シャア、木馬なりモビルスーツを発見したら
    すぐにしらせろ。ガウで仕留めてみせる」
シャア 「わざわざのお見送りには恐縮するよ。
    今回はそのつもりだ。頼むよ、ガルマ」


とザクで出撃をしながら、ホワイトベースにガウを撃墜させるために思考するので、

「勝利の栄光を、君に」


という言葉も、今考えてみると殺害予告だったように思えて仕方がない。


ホワイトベース側はアムロの提案通り、ブライトがガンダムを囮になる陽動作戦を指示。

ホワイトベース、ガンキャノン、ガンタンクが雨天野球場の中で待機しながら
後ろからガウ攻撃空母に奇襲で迎撃することを命令する。


またシャアもそのことを大体、把握しているように、

「どうも、味方の兵までだますというのは性に合わんな。
 さて、木馬からモビルスーツが出たはずだが」


と作戦は読んでいるようであり、ガンダムに乗ったアムロから離れて状況を見ると、

「やるな、モビルスーツめ。我々をおびき出すつもりか。ということは
 木馬はうしろだな、なるほどいい作戦だ。仇討ちをさせてもらう」


シャアの巧妙に仕組まれたガルマ仇討ちまでのカウントダウンが始まっていく。


こんな感じで見事にシャアの術中にハマり、ガルマが搭乗していたガウは後ろから奇襲
を受け、集中砲火の中ホワイトベースに対し特攻をするのですが、シャアの裏切りは、

「フフフフ、ガルマ、聞こえていたら君の生まれの不幸を呪うがいい」
「君はいい友人であったが、君の父上がいけないのだよ。
 フフフフ、ハハハハハ」


とガルマ散るの名セリフとして、仇討ちが完了となり、

「・・・シャア、謀(はか)ったな。シャア!」


と「人を信じすぎる純粋さ」と「お坊ちゃんとしての精神的な甘さ」「英雄として焦ったプライド」が後悔と絶望感で入り混じり20年の運命に幕を閉じることになるのです。


ちなみに劇場版ではガウを背後から狙うシーンは「映像の法則」に則っているので、TVの描写が正しいと富野由悠季氏は語っているのですが、裏切られた走馬灯よりも、恋人のイセリナが出てくるのは、ガルマがそれだけ純粋だった証拠かもしれませんね。


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ジオン公国に栄光あれーっ

レクタングル(大)
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